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ベトナムの三菱商事主導のブンアン2石炭火力発電事業、途中参加検討中の韓国電力公社(KEPCO)の予備審査で事業損失の見込み指摘(RIEF)

2020-06-18 00:07:51

KEPCO001キャプチャ

 

 三菱商事等が推進しているベトナムでのブンアン2石炭火力発電事業で、事業から撤退する香港の共同事業主体の株取得を検討している韓国電力公社(KEPCO)について韓国が実施した予備的審査で、事業が投資実行の判断ラインを割り込み、事業の現在価値は1億5800万㌦(約170億円)の損失になると指摘されたことがわかった。

 

 (写真は、ベトナムのブンアン2石炭火力事業に参加を検討中の韓国KEPCO)

 

  ブンアン2石炭火力事業への出資者は、三菱商事(40%)、中国電力(20%)、香港の電力会社CLP(40%)となっている。このうちCLPは昨年末、脱炭素方針を掲げて事業からの撤退を表明。三菱商事は、このCLP分の出資株をKEPCOに取得することを提案してきた。https://rief-jp.org/ct8/97374

 

ブンアン2石炭火力発電所計画に隣接するブンアン1火力発電所
ブンアン2石炭火力発電所計画に隣接するブンアン1火力発電所

 

 KEPCOは韓国政府が株式の51%を保有する公的電力会社。韓国では、公的機関が行う投資事業について事業費が500億ウォンを超える場合、予備妥当性評価を行い、事業推進を判断する手続きが必要。そこで政府系シンクタンク韓国開発研究院(KDI)が予備妥当性評価を実施した。

 

 その結果、KEPCOが関与することになる事業期間中(2020年~2048年)に発生する支出と収益の現在価値を比較した場合、KEPCOの損失分は7900万㌦(958億ウォン=約86億円)になると試算された。試算は3月だったが、このほど、韓国国会議員の資料公開請求で明らかになった。ただ、KDIはこうした試算を示したうえで、KEPCOの出資を認める判断を示している。

 

 この点について韓国の報道は、「KDIの調査は、定量評価と定性評価の両方を同時に実施し、定性評価では計画に参加することのメリットを指摘している。またKDIはプロジェクトに対する定量評価では常にコンサーバティブ(慎重)な基準をとる」とするKEPCO担当者のコメントを付している。

 

 環境NGOのFOEジャパンは、逆に「KDIの指摘として、『KEPCOが提示した事業費は詳細項目が提示されておらず、まだ事業全体のデューデリジェンスを実行していない状況』として、今後さらなる費用が追加される可能性を示唆している」と指摘、事業の経済的妥当性への疑念を深めている。

 

FOE001キャプチャ

 

 また、石炭火力と競合する再生可能エネルギーのコストはグローバルに年々低下を続けている。したがって、今後、ブンアン2の石炭火力事業の収益はさらに下がることも予想される、として、「示されたマイナス収益の幅は、今後、拡大することはあっても縮小することはない」と強調している。

 同事業には日本の三菱商事や中国電力が出資者であるほか、政府の政策金融機関の国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)の融資・付保を前提に、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行の4行が協調融資をするとみられている。

 

 FOEジャパンは「収益性に疑念が生じる事業に融資する場合、各行の経営陣は株主代表訴訟を受ける可能性がある。JBICとNEXIも、損失が事前に予測される事業に、国民の税金を投じるような公的支援を行なうべきではない」としている。

 

 そのうえで、「ベトナムは太陽光・風力・洋上風力などの再エネのポテンシャルが非常に高い国。事業予定地の近隣でも、多数の再エネ事業が実施・計画されている。日本の官民も、ブンアン2からは撤退し、ベトナムの脱炭素を後押しすべき」と求めている。

 

「ブンアン2建設反対」をいったん宣言したが、すぐに撤回した小泉環境相
「ブンアン2建設反対」をいったん宣言したが、すぐに撤回した小泉環境相

 

 ブンアン2石炭火力発電所建設予定地は、ペトロベトナム(PetroVietnam)によるブンアン1石炭火力発電所の真横に位置する。ブンアン1火力では、石炭輸送時に周辺に汚染が起きる問題で地域住民とトラブルが起きているほか、予定地の10㎞未満の地には、2016年に未処理の廃液放出で大規模な海洋汚染を起こした製鉄所もある。周辺一帯は大気汚染、水質汚染、増え続ける石炭灰などの様々な環境課題に直面している。

 

  同発電所を巡っては小泉進次郎環境相が1月下旬に、事業のEPCは中国と米国企業が担うため、日本からの「低炭素型インフラ輸出には当たらず」といったん、建設計画に反対の立場を表明し、その後撤回するというやり取りがあった。http://rief-jp.org/ct1/98476

https://www.foejapan.org/aid/jbic02/va/200612.html

http://www.koreatimes.co.kr/www/tech/2020/06/515_291062.html