HOME10.電力・エネルギー |経産省「石炭火力100基休廃止」方針、実は「石炭依存」維持策では。旧式からUSC型への切り替え促進でも、合計のCO2排出量は日本全体の1割強。Jパワーは新たに2基のUSC稼働(RIEF) |

経産省「石炭火力100基休廃止」方針、実は「石炭依存」維持策では。旧式からUSC型への切り替え促進でも、合計のCO2排出量は日本全体の1割強。Jパワーは新たに2基のUSC稼働(RIEF)

2020-07-03 12:21:37

001Jパワーキャプチャ

 

 経済産業省が旧式石炭火力発電所を約100基休廃止の方針を打ち出す中で、2つの石炭火力が新たに営業稼働した。電源開発(Jパワー)が広島県竹原市と茨城県鹿嶋市で建設を進めてきた超々臨界圧石炭火力(USC)発電所が相次いで動き出した。USCは旧式石炭火力よりCO2排出量は少ないが、天然ガス火力の2倍の排出量で、EU等では廃止対象になっている。経産省の「100基休廃止」方針は、旧式からUSCへの転換策でしかなく、「石炭依存」を基本的に維持していることを示す。http://rief-jp.org/ct8/104292?ctid=70

 

 (写真は、広島県竹原市で新たに稼働したJパワーの石炭火力発電所)

 

 Jパワーが6月30日に営業運転を開始したのは、広島県竹原市忠海の石炭火力火力発電所。旧1、2号機(25万kW、35万kW)を廃止し、設備容量は両火力の合計と同じ60万kWの新1号機とする。発電方式はUSC。明確な旧式⇒USC転換だ。熱効率転換は世界最高水準(石炭火力として)約 48%を達成したとしている。Jパワーでは、将来、バイオマス混焼も目指すとしている。

 

茨城・鹿嶋市で稼働した鹿島火力発電所
茨城・鹿嶋市で稼働した鹿島火力発電所

 

 7月1日には、茨城県鹿嶋市で日本製鉄と共同出資した鹿島パワーの石炭火力「鹿島火力発電所2号機」も営業運転に入った。日本製鉄の東日本製鉄所鹿島地区内に建設した。同火力もUSCで発電容量は64.5万kWと大型だ。

 

 環境NGOの「気候ネットワーク(KIKO)」によると、鹿島の発電所は、東京電力が東日本大震災後に260万kWの電源入札を行った際に落札した計画の一つで、東電福島第一原子力発電所事故以降、稼働停止に入った原発に代わって、国内で石炭火力新設増のきっかけとなったもの、という。

 

 温暖化加速の要因となっている人為的なCO2排出量でみると、石炭火力はUSCの場合でも天然ガス火力の2倍も排出する。CO2排出係数は766g/kWhで、日本の発電事業者の業界団体が自主目標とする370g/kWhを大幅に上回る。Jパワーの広島の発電所の場合、年間316万㌧を継続して排出する。鹿嶋市の発電所もほぼ同規模の排出を続ける。

 

 USC型の発電所は現在、国内に26基(2018年現在)あるほか、2019年の稼働分と現在建設中が16基ある。これらは建設時期が新しいので、ロックイン効果が続き、2030年以降も3000万kW以上の運転を続ける。USC42基のCO2排出量をJパワーの広島発電所と同等とすれば、合計で年間1億3270万㌧となる。これは日本の温室効果ガス排出量の1割を上回る。旧式石炭火力の休廃止でCO2排出量は約6400万〜1億600万㌧削減される見通しだが、その削減分を上回る排出を続けることになる。

 

 さらにKIKOは、今回、稼働を始めた両USC型火力発電所が立地する県が、いずれも温暖化の加速で深刻な気候災害が起きた県である点も指摘している。広島では2年前の西日本豪雨で、多くの人命が失われ、被害総額も過去最高となった。一方の茨城県でも、2015年の常総市周辺での記録的豪雨で、鬼怒川の堤防が決壊、甚大な被害が出た。

 

 石炭火力が主要な汚染源として、温暖化の影響を加速し、その被害を現実に受けた地域で、新たに「元凶」となる石炭火力を稼働させるという「暴挙」に映る。だが、事業主体はもちろんのこと、地元自治体も、まるで別問題であるかのように振る舞っている。

 

 もちろん、温暖化の影響は石炭火力の稼働地元だけではなく、グローバルに影響する。今夏はすでにロシアのシベリアで38℃の高温が記録され、永久凍土の溶融による建物事故のニュースも届く。南極の温度も、世界平均より3倍のスピードで上昇していることも科学的観測で確認されている。にもかかわらず、日本の行政と電力会社があくまでも石炭に固執するのはなぜなのか。エネルギー供給への不安か、変わることへの不安か、あるいは利権の維持か・・・http://rief-jp.org/ct8/104233?ctid=70

http://rief-jp.org/ct4/104019?ctid=70

(RIEF)

https://www.jpower.co.jp/news_release/2020/06/news200630.html

https://www.jpower.co.jp/news_release/2020/07/news200701.html

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2020/07/20200702_coal-newpolicy-METI.pdf