HOME |シベリアでの6月の最高気温38℃(100.4℉)は「本物」。世界気象機関の確認要請にロシアが回答。極域での温暖化の加速度「3倍説」も。シベリアの高温化は日本にどう影響するか(RIEF) |

シベリアでの6月の最高気温38℃(100.4℉)は「本物」。世界気象機関の確認要請にロシアが回答。極域での温暖化の加速度「3倍説」も。シベリアの高温化は日本にどう影響するか(RIEF)

2020-07-06 22:34:45

syberia001キャプチャ

 

   6月後半、ロシアのシベリアの北極圏内の小村で、気温が38℃まで上昇した件で、世界気象機関(WMO)から確認を求められていたロシアのロシア連邦水文気象環境監視局(Meteorf)は最高気温を確認した。38℃は、華氏では100℉超えの100.4℉だ。Meterofの観測では、7月に入ってもシベリア中部のクラスノヤルスク地方等で30℃~35℃の高温が予測されるなどの事態が続いている。圏域での温暖化の影響は、地球の他地域の2倍のスピードで進むとされてきたが、気候学者の中には「もはや3倍に加速している」と指摘する声も出ている。

 

 シベリアで38℃の気温を記録したのは、東シベリアのサハ共和国の小さな村、ベルホヤンスク(Verkhoyansk)。6月23日に観測された。同地では観測史上最高で、北極圏内全体でも歴史的な最高温度だった。あまりの高温に、「フェイクニュースではないか」との疑問も出た。このため、WMOはロシアのMeteorfに確認を要請していた。http://rief-jp.org/ct4/104019?ctid=70

 

 Meteorfによると、ベルホヤンスクでは6月18日から28日にかけて、最高気温が86℉(30℃)。このうち、ピーク時の20日には100.4℉(38℃)に達した。さらに10日後の30日にも、93℉(33.9℃)に上昇している。同じサハ共和国のブルンスキー地区のウスチ・オレネク(Ust’-Olenek)でも30日、34.3℃を記録している。5月から同地を襲っていた熱波の影響が記録的な気温上昇をもたらしたとみられる。

 

meteorf002キャプチャ

 

 熱波の影響が大きくなった背景には、6月中旬以降、シベリア全体を覆っていた高気圧が拡大し、居座る状態が続くという気圧配置になったことが大きい。この強力な高気圧に阻まれて、北極圏からの冷気が南下できず、陸域での熱波が加速したとみられる。

 

 7月に入っても東シベリアだけでなく、シベリア中部のクラスノヤルスク地方等でも30℃~35℃の高温が予測されるなど、シベリア全体で高温が続いている。極域での温暖化の影響は、他地域の倍のスピードで進んでいるとされてきた。しかし、米航空宇宙局(NASA)のGoddard Institute for Space StudiesのGavin Schmidt氏は「これらのデータをみると、極域での温暖化の進展度は、他地域の3倍に加速している可能性がある」と指摘している。

 

 シベリアの気温上昇は、同地を覆う永久凍土の溶解を加速させ、森林火災を増発するリスクが高まる。5月29日にロシア北部の北極圏内のノリリスク市で起きたニッケル工場で火力発電所の燃料タンクが破損して、燃料が大量に河川を汚染した事故が起きているが、原因は発電所が地盤としていた永久凍土が溶解し、建物が傾いたことが原因とされる。http://rief-jp.org/ct12/103186?ctid=70

 

永久凍土の溶解で傾いた火力発電所施設から流出した燃料で赤く染まった河川
永久凍土の溶解で傾いた火力発電所施設から流出した燃料で赤く染まった河川

 

 シベリアの多くのインフラや建物は、永久凍土の上に建設されており、同様の事故は過去にも起きている。さらに永久凍土にはCO2より温暖化係数の高いメタン等が含まれており、それらが溶解とともに大気中に放出される懸念も現実のものになっている。

 

  これまでの北極圏域内での最高気温は1915年にアラスカのフォート・ユーコンで記録された37.5℃だった。ロシアの今年の冬は例年にない暖冬で、モスクワでも雪がほとんど降らなかった。ベルホヤンスクでは、昨年11月にはマイナス50℃にまで下がっており、最寒気と史上最高気温の温度差は、88℃の変動になる。