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今度はシベリアで温暖化の影響で「シベリア・シルク蛾の幼虫」が大量発生。森林を食べ尽くし枯死させ、森林火災を加速。シベリアの大地のCO2の吸収力も低下(RIEF)

2020-07-10 17:33:17

kaikoga001キャプチャ

 

  気候変動の影響で異常高温が記録されているロシアのシベリアで、今後は、蛾の幼虫の異常発生が起きているという。異常発生しているのは「シベリアシルク蛾」の幼虫。東シベリアのクラスノヤルスクでは12万本以上の針葉樹が食い尽くされ、枯死した。食害を受けて枯死した森林は燃えやすく、森林火災が増長されるリスクが高まっている。

 

 (写真は、針葉樹を食べ尽くすシベリアシルク蛾の幼虫)

 

 シベリアシルク蛾(Siberian silk moth)は通常、冬季は不活動だが、春に目覚め、夏から秋にかけて繁殖する。今回の繁殖は例年の発生地域よりも150km北側にシフトしており、温暖化の影響を受けているとみられる。

 

 ロシアの蛾の専門家であるVladimir Soldatov氏は「長年の専門家としての私の経験に照らしても、これほど大きく、成長の早い蛾の出現は見たことがない。繁殖の広がりで、森林は悲劇的な影響を受ける可能性がある」と警告している。

 

丸々と太った幼虫
丸々と太った幼虫

 

 蛾の幼虫たちの食欲は旺盛だ。針葉樹の葉を丸裸にするように食べ尽くす。シベリアでは先月、最高気温が38℃という歴史的な高温が記録されるなど、気候変動の影響が加速している。ロシア水文気象環境監視局(Rosgidromet)の主席気象学者、マリーナ・マカロワ(Marina Makarova)氏は、「今冬のシベリアの気温は、130年間の観測史上で最も高く、平均気温は、冬季の平均値を最大6℃上回った」と指摘している。

 

さらに、最近は、キクイムシ(Bark Beetle)の発生も報告されている。キクイムシは木の幹に住み着き、蛾の幼虫と同様に木を食い尽くす。今回の大量発生は、2003年以来のものという。

 

 異常高温の影響と、シベリア東部で降雨量が例年よりも3分の1ほど増加したことで、特にトゥルン(Tulun)周辺地域では洪水が発生している。同地では壊滅的な被害が生じ、数千人が避難を余儀なくされたという。

 

食害で枯死した森林
食害で枯死した森林

 

 シベリアシルク蛾やキクイムシによる食害と、気温上昇の影響を受けた森林の火災は、環境NGOのグリーンピースによると、1月から5月半ばまでに、110万haの高緯度地帯の北方林を含む480万haの森林が火災で壊滅的な被害となった。クラスノヤルスク市森林局の森林監視研究所では、2000~2009年の森林火災面積は年間平均約300万haだった。だが、直近の10年の2010~2019年には、この平均値が600万haへと倍増しているという。

 

 シベリアの気温上昇による永久凍土の溶解と森林火災による森林消失の両面から、シベリアの大地が吸収してきたCO2やメタン(CH4)が逆に放出増に転じるリスクが高まっている。北極圏域での温暖化の進展は他の地域の2倍から3倍の速さで進行しているとされる。

 

シベリアシルク蛾は、羽化するとこうなる。
シベリアシルク蛾は、羽化するとこうなる。

 

 東アフリカからインドにかけて猛威を奮っているサバクトビバッタの食害問題に続いて、各地で温暖化の影響を受けた生物たちが、「反乱」を起こし始めているようにも映る。

https://phys.org/news/2020-06-climate-moths-siberia.html

https://www.forestresearch.gov.uk/tools-and-resources/pest-and-disease-resources/siberian-silk-moth-dendrolimus-sibiricus/