HOME8.温暖化・気候変動 |国連のグテレス事務総長、国際エネルギー機関(IEA)国際会議で、コロナ感染からの経済回復策で石炭火力促進策をとる国々に「懸念」表明。日本も懸念対象とみられる(RIEF) |

国連のグテレス事務総長、国際エネルギー機関(IEA)国際会議で、コロナ感染からの経済回復策で石炭火力促進策をとる国々に「懸念」表明。日本も懸念対象とみられる(RIEF)

2020-07-11 16:40:17

Gute003キャプチャ

 

  国連のアントニオ・グテレス事務総長はこのほど、国際エネルギー機関(IEA)が開いたオンラインの「クリーンエネルギー移行サミット」会議に出席、新型コロナウイルス感染後の景気対策で、石炭火力発電等を重視する国々がいると指摘、経済的にも、納税者の税金を適正に使う上でも問題があるので、再生可能エネルギー事業にシフトするよう要請した。同氏は「問題の国々」を名指ししなかったが、超々臨界圧石炭火力発電(USC)を内外で建設促進することを改めて打ち出した日本が含まれるとみられる。

 

 (写真は、IEAのオンライン会議で語るグテレス国連事務総長)

 

 IEAの会議は9日開いた「Clean Energy Transitions Summit」。約40カ国・機関のエネルギー政策担当閣僚等が参加した。日本からは梶山経済産業相が参加した。席上、グテレス事務総長はコロナからの景気回復で、パリ協定と整合するグリーンリカバリーなどに取り組んでいる国々として、EUや韓国、カナダ、ナイジェリア、インドなどを国名をあげて称賛した。

 

IEA001キャプチャ

 

 一方で「いくつかの国々は、財政的に困難に陥っている化石燃料関連企業を支援する経済刺激策を打ち出したり、中には石炭火力発電支援策を選ぶ国もある」と指摘した。事務総長は、最近のG20の報告の中で、経済対策としてクリーンエネルギーよりも化石燃料事業に投じられる資金は2倍にもなると指摘、各国の近視眼的な経済運営姿勢に対して懸念を表明した。

 

 事務総長はクリーンエネルギー開発を優先する理由として、①健康②科学③経済性、の3点をあげた。①は石炭火力等の化石燃料に伴う大気汚染で、毎年900万人が早死にし、平均寿命を3年短縮している点だ。②は言うまでもなく気候変動への影響の顕在化である。③はグローバルでみると、太陽光発電がすでに石炭火力発電より発電単価が安くなっており、再エネはどの市場でも石炭火力より経済性で上回っている、としている。

 

 こうした具体的な理由をあげたうえで、事務総長は、「新規の石炭火力事業に取り組まないことにコミットしようじゃないか。石炭事業を、コロナウイルスの回復策に盛り込む余地は全くない。どの国も2050年のCO2排出量ネットゼロを約束しなければならないのだ。来年に延期されたCOP26では、もっと野心的な国別対策貢献(NDCs)を提出すべきだ」と強調した。

 

中国の張敬華氏
中国の張敬華氏

 

 事務総長に「再エネに前向きな国々」として名指しされなかった国の中で、中国のエネルギー相、張敬華(Zhang Jinhua)氏は、「われわれはエネルギー部門のクリーンで効率的な低炭素開発に取り組んでいる。水力、風力、太陽光の開発に力を入れている」と強調した。

 

 同じく「前向きな国」には含まれず、むしろ「懸念先」になっているとみられる日本の梶山経産相も会議で発言。経産省によると「エネルギー転換は各国固有の事情に応じて進めていくことが必要であるという基本方針を示し、再エネの主力電源化、非効率な石炭火力のフェードアウトに向けた我が国の具体的な取組について紹介した」という。先に公表した非効率の旧式石炭火力発電を停止し、相対的に高効率とされる超々臨界圧石炭火力(USC)などを推進を軸とすることとした政策をアピールした。http://rief-jp.org/ct8/104337?ctid=70

 

梶山経産相
梶山経産相

 

 米国のエネルギー長官のDan Brouillette氏は「再エネだけではどの国も信頼できる電力の供給を確保することができない。電力網を維持するためには、複数の燃料を幅広くミックスして使用することでうまくいく」と化石燃料維持の姿勢を明確に示したうえで、「もしエネルギー源がクリーンでないならば、イノベーションによって、よりクリーンにすることを目指せばいい」と反論した。

 https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/2020-07-09/remarks-international-energy-agency-clean-energy-transition-summit