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アップル、サプライチェーンを含め、2030年までにグローバルベースでの「カーボンニュートラル」実現。自然資源回復によるCO2吸収の「ファンド」も立ち上げ(RIEF)

2020-07-22 12:04:49

Apple001キャプチャ

 

   アップルは21日、同社の製品、サプライチェーン、製品ライフサイクルの事業全体からの温室効果ガス(GHG)出量を、2030年までに実質ゼロに抑える「カーボンニュートラル目標」を発表した。アップルはすでにグローバルな事業活動でのカーボンニュートラルは達成しているが、サプライチェーン、ライフサイクルも脱炭素化する。企業活動での脱炭素化を補う形で、ケニアやコロンビアでの破壊された自然資源を回復させてCO2吸収力を高めるための「カーボン・ソリューション・ファンド」を立ち上げる。

 

 (写真は、米オレゴン州にあるモンタギュー風力発電所。同州にあるアップルのデータセンターに電力を供給している)

 

 アップルのCEO、ティム・クック氏は「企業はこれまで以上に持続可能な未来、私たちが共有する地球に対して、私たちの共通の思いから生まれる未来を築くために貢献する重大な局面に立っている。気候変動に対するアクションは、新時代のイノベーションの可能性、雇用創出、持続的な経済成長の礎になり得る。カーボンニュートラルへの当社の取り組みが波及効果をもたらし、さらに大きな変化を生み出すことを期待する」とコメントしている。

 

 カーボンニュートラルの実現のために、同社全体のGHG排出量を2030年までに現在の75%減とし、残り25%については、森林や自然生態系の回復と保護に投資する「カーボン・ソリューション・ファンド」を活用する。同ファンドは、環境NGOの「Conservation International(CI)」と連携し、コロンビアの沿岸の1万1000haに及ぶ荒廃したマングローブ林を回復・保護するプロジェクトのほか、ケニアの荒廃したサバンナを自然の力で回復させる取り組みを支援することで、CO2吸収力の向上と、地域コミュニティへの貢献を進めるとしている。

 

アップルの自社運営の太陽光発電設備
アップルの自社運営の太陽光発電設備

 

 アップルはこれまでにオフィスや直営店、データセンターで消費する電力はすべて風力や太陽光などの再エネ電力で賄っている。今回、こうした取り組みを、主力製品のスマートフォン「iPhone」などの生産を担うサプライチェーンにも拡大する。そのため、新たに「インパクトアクセラレーター」を設立し、マイノリティ所有の事業に対して省エネ投資等を集中することで、サプライチェーン企業の改善やコミュニティへの関与も深める。

 

 アクセラレーターはGHG削減だけでなく、アップルが投じる1億㌦規模の予算で教育、経済的平等、刑事司法改革等にも取り組み、人種の平等と正義のためのイニシアティブ(Racial Equity and Justice Initiative)の一環として展開する方針という。

 

 部品の生産や製品の組み立て等を行うサプライヤーの脱炭素化では、事業に伴う使用電力をすべて再エネ電力に切り替えることを求めていく。すでに70社以上が転換を確約し、2030年までに数百社に上るアップルのサプライヤーすべての「脱炭素化」を実現する計画だ。

 

2014年以来、アップルのデータセンターはすべて100%再エネ電力で運営
2014年以来、アップルのデータセンターはすべて100%再エネ電力で運営

 

 また、サーキュラーエコノミーも推進する。アップル製品に使うアルミニウムやコバルトなどについて、再生したリサイクル材を積極的に使うことで、素材の採掘などに伴うGHG排出量を抑制する。アルミニウムについてはサプライヤー企業と協力し炭素を含まないアルミニウム精錬プロセスの開発を支援する。

 

 太陽光や風力等の再エネ電力の自社開発は、米国内のアリゾナ、オレゴン、イリノイの各州を中心に展開しており、自社使用の再エネ電力は1GWを超えている。一般家庭の年間消費電力量に換算して15万世帯分に相当する。これらの電力でアップルの自社施設の電力は80%以上をカバーしている。グローバルでも北欧で世界最大規模の太陽光発電事業に取り組んでいるほか、フィリピンやタイでも新規プロジェクトに参画している。(RIEF)

 

https://www.apple.com/jp/newsroom/2020/07/apple-commits-to-be-100-percent-carbon-neutral-for-its-supply-chain-and-products-by-2030/

https://www.apple.com/jp/environment/