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昨年の世界CO2排出量、中国急増で過去最高に=IEA (Reuters)

2012-05-26 08:07:15

石炭火力発電所の煙突の前を歩く人々(12年1月12日、中国北京)
石炭火力発電所の煙突の前を歩く人々(12年1月12日、中国北京)


 【パリ24日ロイター時事】国際エネルギー機関(IEA)は24日、2011年の世界の二酸化炭素(CO2)排出量が過去最高を記録したと発表した。中国の排出量が急増し、米国や欧州での減少分が相殺されたという。IEAの暫定推計によると、11年のCO2排出量は前年比3.2%増の316億メートルトン(348億3000万ショートトン)だった。世界最大の排出国である中国の排出量が9.3%増加したためで、石炭の利用が増えたことが主因だ。

 IEAの主任エコノミスト、ファティ・ビロル氏はロイター通信に対し、「このデータを見ると、(50年までに)気温が6度上がるシナリオと完全に一致する。これが現実になると地球に壊滅的な影響が及ぶ」と述べた。

 科学者らは、農産物の不作や氷河の溶融といった気候変動による壊滅的な影響を回避するには、今世紀の地球の平均気温が産業革命以前の水準から2度以上上昇しないようにする必要があると指摘している。そして、それは20年の排出量をCO2換算で440億トン前後に抑えなければ実現不可能だとしている。

 ドイツのボンでは現在、180カ国以上の交渉担当者が集まり、気候変動に関する新たな取り決めの15年までの締結を目指して作業を行っている。狙いは京都議定書の期限が今年末に切れた後の排出削減を確実にすることだ。しかし、交渉手続き上のいざこざがあったり、経済的な問題により排出削減の意欲が薄れたりしていることが会議の進行を脅かしている。

 ビロル氏は「直ちに交渉の突破口ができると考えるのは非現実的だ。国際的な政策アジェンダ(目標課題)における気候変動の重要度は下がっている。憂慮すべき傾向だ」と述べた。

 また同氏は福島第1原子力発電所事故後の日本の原発稼働停止が及ぼした影響を警告した。原発の段階的停止は11年の日本のCO2排出量が2.4%増えた主な要因となった。同氏は「日本については、排出増の理由がもっぱら化石燃料の使用増にある。これは他の国で脱原発が進むとどうなるかを示す重要な例だ」と述べた。

 中国のCO2排出量は昨年急増したが、IEAによると、国内総生産(GDP)1単位当たり排出量(カーボン・インテンシティ=炭素強度)は2005年から11年までの間に15%減少した。これは世界第2位の経済大国になった中国が、成長促進にあたってCO2消費の節減方法を講じつつあることを示唆している。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012052500380