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旅行大手のH.I.S.が主導する宮城県・角田市でのパーム油燃料のバイオマス発電建設計画中止を求め、世界15カ国30の環境NGOが同社と、同社の株主に公開質問状送付(RIEF)

2020-08-31 22:45:54

HIS001キャプチャ

 

 旅行業を軸にエネルギー事業にも進出しているエイチ・アイ・エス(H.I.S.)が宮城県角田市で建設を進めているパーム油燃料のバイオマス発電所事業に対して、世界15カ国35の環境保護団体と学識者などが、「熱帯林を破壊し、気候変動を加速させる」として事業からの撤退を求める公開書簡を送った。NGOらはH.I.S.の澤田秀雄社長にも送付した。

 

 焦点となっているパーム油燃料のバイオマス発電事業は、H.I.S.グループ傘下のH.I.S.SUPER電力が、宮城県角田市で建設を進めている。東南アジア等からパーム油を輸入して燃料とする計画で、輸入パーム油については経済産業省が固定価格買取制度(FIT)の適用条件としたRSPO認定の燃料に限定するとしてきた。設備出力は41.1MWで、年間発電量は35万MWhの予定。

 

 しかし、発電所の事業規模から計算すると、調達が必要なパーム油量は年間約7万㌧とみられる。現在、RSPOなどの第三者認証を取得したパーム油の多くは欧米に輸出されており、日本に輸入される量は限られ、その大半が燃料以外の利用に供されている。最近では、バイオマス発電用とするパーム油やパーム椰子殻(PKS)、輸入ペレット等の不足から、日本向け燃料輸出の中には大量の偽装燃料が混じっているとの指摘もある。http://rief-jp.org/ct10/105144?ctid=72

 

FoE Japan サイトから
FoE Japan サイトから

 

 また欧米では、バイオマス発電によるカーボンニュートラル性への疑問が噴出しており、EU等では基準の見直し議論が起きている。こうしたことから、環境NGOらは、H.I.Sに対して、今からでも遅くないから建設を中止するよう求めている。同時に、同社の主要株主37社に対しても、H.I.S.に対して、同事業からの撤退を働きかけるよう求める書簡を送っている。

 

 今回、改めて公開書簡をH.I.S.に送った各国のNGOや環境団体は日本に加え、イギリス、アメリカ、オランダ、ロシア、ドイツ、ボスニアヘルツェゴビナ、オーストラリア、スリランカ、タンザニア、ベルギー、ボリビア、モザンビーク、スウェーデン、チェコの環境保護団体が連名で署名した。

 

パーム油プランテーションのために皆伐された熱帯林(ボルネオ・サラワクで)
パーム油プランテーションのために皆伐された熱帯林(マレーシア・サラワクで:FoE Japan)


 公開書簡では、従来、食品用に使われていたパーム油が近年は、需要の増大に伴い、熱帯林を伐採したアブラヤシ・プランテーションの急拡大を引き起こし、インドネシアやマレーシアで大規模な熱帯林破壊の主因になっていると指摘。両国だけで過去20年間に約350万haの熱帯林が植林転換され、オラウータン等の生息地が各地で破壊されているという。

 

 また、パーム油の需要拡大で、アブラヤシ農地を造成するための熱帯林や泥炭地の開発で、膨大な量のCO2が放出されるとともに、森林が蓄えている膨大な炭素の排出も加味すると、パーム油発電は、石炭火力発電よりはるかに多くのCO2を発生させる、と警告している。再エネ発電にならず、化石燃料発電と同様の負荷を地球に与えるのだ。

 

 NGOらは現地住民らとともに、ボルネオの熱帯林のエコツアーやスタディツアーを展開している。そうした観光業・旅行業にかかわるH.I.S.がエコツーリズムの資源となる熱帯林や気候破壊を引き起こすビジネスに乗り出すことは、同社の経営方針と矛盾し、経営上のリスクにつながると指摘している。NGOらはこの点を同社の株主に訴え、「ESG投資の観点から同社に発電計画の中止を対して働きかけてほしい」と要請している。

 

https://www.foejapan.org/forest/biofuel/200831.html