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環境問題のPRアニメになぜ萌えキャラ?環境省の「温暖化対策×セクシーな女の子」キャンペーンの安易さを、ニューズウィークが批判(RIEF)

2020-10-01 22:03:54

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 環境省がネット等で配信している温暖化対策の啓蒙活動と称して「MOE 萌えキャラクター」(Ministry of the Environmentの頭文字にちなむ)によるアニメPRをネットで展開していることを、ニューズウィークが批判している。男性向けの同人誌や動画などに登場するセクシーな「萌えキャラ」を、深刻な地球温暖化問題の説明に登場させる必要があるのか、という指摘だ。さらに国民の行動変化を求める前に、国のエネルギー政策、エコロジー政策のほうが重要ではないか、と正論を示している。

 

 ニューズウィークの記事は、西村カリン氏の署名記事。環境省のアニメキャンペーンは、女子高生「君野イマ」と「君野ミライ」という2人の主人公が地球に優しいライフスタイルを教えてくれるといったコンセプトだ。

 

 同キャンペーンは、2016年から続いているという。日常生活でぐうたらな態度の「君野イマ」に対し、「君野ミライ」は正しい行動、いわゆる「賢い選択」を示す。地球温暖化の対策として何がいいか、何が悪いか、(国民は)何をすべきかが、2人の会話で分かる筋立てだ。これまで1~2分のアニメが21本制作され、英語版もあるという。

 

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 西村氏は、最近、同アニメを見て驚いた、という。「私は2人の男の子の母として、自分の息子には環境のために『賢い選択』をしてほしい。ただ絶対に、息子に『君野イマと君野ミライ』のアニメは見せたくない。学校で先生がこの環境省のアニメを子供に見せたりしたら、クレームをつける」と指摘。

 

 同氏が問題視するのは、まず、安易なキャラクターの採用にある。「一体、誰が誰向けにこんなキャラクターを考えたのか。なぜ女子高生? なぜ『萌え』? そもそも萌えキャラというのは、男性向けの同人誌や動画などに登場するステレオタイプな女性キャラだ。なぜこんなに深刻な地球温暖化という問題を説明するために、セクシーな女の子の姿が必要なのか。男性のファンタジー?」と、同省の「受け狙い」の姿勢に眉を顰める。

 

 さらに、同省が自分の役所の英語略称との語呂合わせで「萌えキャラ」を違和感なく使って、「いいことをしている」と思い込んでいる態度を、「気持ち悪い」とバッサリ。「このPRキャンペーンに、オタクは喜ぶかもしれないが、女子高生は喜ばないだろう」と付け加えている。

 

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  さらに重要なのは、アニメは税金で作られている点だ。「このキャラクターキャンペーンは2016年から続いているが、このために税金を使うのは果たして妥当だろうか。PRのアニメが必要なら、大人や子供、男女問わずに誰が見てもいい作品にしなければ意味がない」。

 

 「たとえ国民全員がアニメで紹介された『賢い選択』に従ったとしても、日本という国が全体的に地球に優しい国になるわけでもない。国民の行動変化よりも、国のエネルギー政策、エコロジー政策のほうが重要ではないか」

 

 最近は、環境省自身が展開する温暖化対策にも、住民らから疑問の目が向けられている。温暖化を加速する石炭火力発電の扱いでは、環境省は「反対」の立場を強調してきた。しかし、実際は、推進派の経産省との役割分担で、石炭火力維持の片棒を担いでいるとの指摘もある。国の「無策」をアニメで目くらましにしようというのかも。

 

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 西村氏が指摘するように、本来は、国がエネルギー政策を石炭火力中心から転換すれば温暖化対策は大きく進むのに、環境省と経産省は役所同士で「談合」して石炭火力を温存している。その一方で、温暖化の責任は国民にあるかのような、安易なキャンペーンを展開して、国民に責任転嫁している疑問も出てくる。

 

 西村氏は、「今の日本には再生可能エネルギーの割合、原子力発電所の使用済み核燃料の再処理や最終処分など山ほどの課題がある。税金は一部のアニメファン向けのアニメ作品ではなく、具体的にその問題を解決するために使ってほしい」と締めくくっている。全くその通り。萌えキャラアニメを作り続けるようなら、環境省の予算をバッサリ削減すべきだろう。

https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2020/10/pr_2.php