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中国外務省、菅首相の「2050年ネットゼロ」目標を掲げた所信表明演説を歓迎。日中の連携を提案(各紙)

2020-10-26 21:33:42

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 各紙の報道によると、中国外務省の趙立堅副報道局長は26日の記者会見で、菅首相が同日の所信表明演説で「2050年までのネットゼロ」を目標とする意向を表明したことを受けて、「気候変動の問題は人類が直面する重大な課題だ。中日両国はよく意思疎通を続けるべきだ」と述べた。菅首相の表明に先駆けて習近平国家主席が、「2060年より前に実質ゼロにする努力をする」と明言していることを受けた発言とみられる。

 

 (写真は、中国外務省の趙副報道官)

 

 日本経済新聞等が報道した。それによると、趙氏は、菅首相の「2050年ネットゼロ発言」について、「称賛し歓迎する」と述べた。そのうえで、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に触れ、「日本とともに、協定の全面的な実施を後押しして連携したい」と指摘した。

 

 習近平主席は9月の国連総会で、「CO2排出量を2030年より前にピークアウトさせ、2060年より前に実質ゼロにするよう努力する」との目標を示した。中国にはパリ協定からの離脱を通告し、温暖化対策に消極的な米国を意識し、日本や欧州と歩調を合わせることで、「国際協調路線」をアピールする狙いもあるとみられる。

 

 習氏の温暖化対策への積極姿勢は、国際的な狙いとともに、国内の石炭中心のエネルギー構造を抜本変革する狙いもある。菅首相の「ネットゼロ」目標も、石炭火力発電の取り扱いが最大の焦点になる点で、両国は政策的共通点を抱えているともいえる。

 

 さらに、菅首相の「ネットゼロ」宣言決断の背景にも、来月の米大統領選挙で、世論調査で優位に立つ民主党のバイデン候補が勝利すれば、パリ協定への復帰、2050年ネットゼロ目標の採用等、国連・EUと歩調を合わせた政策転換が見込まれるとの観測も計算に入れているとの見方もある。

 

 ただ、予想に反してトランプ氏が再選される可能性もある。仮にそうなると、温暖化政策は現状の政策が続く。日本が国連・EUに続いて、中国とも「2050年ネットゼロ」推進で協力する姿勢を打ち出すと、対米関係が微妙になる可能性も出かねない。

 

 温暖化対策は一国ベースでの対応では不十分で、国際連携、地域連携が必要とされることから、日中連携に「大義名分」はある。しかし、発足間もない菅政権が、米国の動きを無視して、中国の呼びかけに同調するのは、ちょっと難しい。菅政権からの返答は、大統領選挙の結果が決まってからになりそうだ。

 

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO65466140W0A021C2PP8000?type=my#AAAUAgAAMA