HOME8.温暖化・気候変動 |経団連、「新成長戦略」を公表。温室効果ガス「2050年実質ゼロ」に向け、革新的技術開発支援への大規模な国費投入要求。FIT制度は廃止、洋上風力等へ集中支援。原発新規建設も(RIEF) |

経団連、「新成長戦略」を公表。温室効果ガス「2050年実質ゼロ」に向け、革新的技術開発支援への大規模な国費投入要求。FIT制度は廃止、洋上風力等へ集中支援。原発新規建設も(RIEF)

2020-11-10 12:44:28

keidanrennキャプチャ

 

 経団連は9日、「新成長戦略」をまとめた。菅政権が2050年の温暖化ガス排出実質ゼロ目標を掲げたことを支持するとともに、脱炭素社会への移行に不可欠な革新的技術の開発・普及を産業政策の中軸とする国家プロジェクトの立ち上げと、「長期かつ大規模の国費投入を行うべき」と提言した。再生可能エネルギー政策では、現行の固定価格買取制度(FIT)からの転換を求め、原発についてはむしろ強化し、2030 年までに新型炉新規建設を国家プロジェクトとして着手するよう求めた。

 

 同提言は、「サステナブルな資本主義」を追求するとして、広範囲な領域への政策対応を求めている。そのうち、気候変動・温暖化対応では、2050年ネットゼロを目標とした気候変動対策への取り組みを中心に提言している。

 

 このうち、国内対応に加えて国際対応として、日本と同様の稠密な都市・人口構造と旺盛なエネルギー需要を擁するアジア各国を中心に、ネット・ゼロエミッション技術と、現行の化石燃料依存体制を移行させるトランジション技術を積極的に導入することを目指す国家連合の形成を求めた。

 

 先日、フィリピン政府が新型石炭火力発電建設を一時停止するモラトリアムを宣言する一方で、既存の開発・計画中の石炭火力発電の建設を促進する方針を打ち出した。経団連がイメージする「アジアの国家連合」は、こうした国との連携にあるようだ。http://rief-jp.org/ct10/107979

 

 気候変動対策では、新型コロナ感染拡大で経済停滞が生じた2020年でも、世界のCO2 排出量は前年比8%程度の減少に留まると見込まれることを指摘。人々の暮らしが激変するほどのブレーキが世界経済にかかっても、抜本的な温室効果ガス削減には至らないことがわかったとして、「既存の技術と社会経済構造のも とでは両立不可能であり、イノベーションを通じた経済社会の大改革が唯一の 解」との見解を強調している。

 

 国家プロ ジェクトとして求める温暖化対策の具体例としては、大容量・ 低価格で安全な次世代蓄電池の導入、安価な水素の大量供給および産業プロ セス・発電等も含む需要側技術の開発、電化・水素化、CO2を固定・再利用するCCUSの商用化等を例示した。

 

 エネルギーインフラについては地域創生を意識して、屋根置き太陽光パネルや地域の未利用材を活用したバイオマス発電、蓄電池・ヒートポンプ、家電消費電力の個別制御をはじめとするデジタル技術等の普及を踏まえたエネルギーの地産地消も新たな選択肢、と指摘した。

 

  FIT制度については、「政府は再エネ全体に漫然と政策的なプレミアムを上乗せする施策を講じてきた」と批判。その結果、国民負担は年額2.4兆円膨らんでおり、持続可能と言えないとした。同制度に代わって、競争力ある再エネを重点支援する政策への転換を求めている。新政策の対象として、屋根置き等の太陽光、大規模洋上風力発電などが考えられる、とした。

 

 政府に求める支援策では、イノベーションに取り組む企業に対する税財政面の支援、海外への情報発信での連携、海外とのイコールフッティングを含めた産業競争力確保策、規制改革などをあげている。

 

 また効率的に脱炭素社会を目指すには、わが国のエネルギーの将来像を示すこ とが重要として、政府が2015年に定めた2030 年度のエネルギーミッ クス目標は「達成に向けた道筋は必ずしも明らかではない」とした。そのうえで、次期エネルギー基本計画での合理的な将来像、長期ビジョンを見据えたイノベーションの課題抽出・ 対応策を示すよう求めている。

 

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/108_honbun.html