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東芝エネルギーシステムズ、ANA等6社、石炭火力発電等から排出されるCO2を化学分解し、航空機のジェット燃料に再利用するプロジェクトで連携。カーボンリサイクルの実現目指す(RIEF)

2020-12-02 17:34:50

 東芝グループの東芝エネルギーシステムズ、全日本空輸(ANA)、東洋エンジニアリング等の6社は、石炭火力発電等から発生するCO2を化学分解して「持続可能なジェット燃料(SAF)」を製造するP2C(Power to Chemical)プロセス活用のカーボンリサイクル事業のビジネスモデルを検証することで合意した。モデル検証は今年度末を予定しているという。

 カーボンリサイクル事業の検証に参加するのは、東芝エネルギーシステムズ等の3社のほか、東芝本体、出光興産、日本CCS調査会社の6社。事業の中核となるのは、東芝エネルギーシステムズの東芝研究開発センターが開発したCO2を一酸化炭素(CO)に電気分解する技術を用いたP2Cプロセス。

 同センターは人工光合成技術をベースとして触媒電極を開発、気体のままのCO2と水を同時に反応させることで、j従来技術の課題だった変換反応の停滞や電流密度の低下を解消し、CO2の直接利用に成功のメドをつけた。また多孔質触媒電極技術などの開発によって、従来比約450倍の高率でのCO2電解セルを実現している。

東芝エネルギーシステムズのカーボンリサイクル
東芝エネルギーシステムズのカーボンリサイクル

 開発した触媒技術を活用することで、石炭火力や化学プラント等から排出されるCO2を「持続可能なジェット燃料(SAF)」などの市場価値の高い燃料等に再利用するカーボンリサイクルが可能になるという。今回の6社合意で、こうしたビジネスモデルの検証を始め、実用化に向けた準備を進める。

 今回の検証では、各社が持つ知見・技術、プラント設備等を活かし、SAFを供給するサプライチェーンでの課題の検討や、将来のビジネスモデルの検討を行う。火力発電所等の設備からの排出ガスから分離回収したCO2を原料として、再生可能エネルギーと水素を用いたSAFを製造し、航空機のフライトまでの供給サプライチェーンの上流から下流までを、事業化の視点で全体的に検討する。

 航空業界ではICAO(国際民間航空機関)がCORSIA(国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム)においてCO2排出削減目標を定めている。このため航空各社はジェット燃料のCO2排出削減が最大の課題となっている。ジェット燃料の低炭素、あるいは脱炭素化に向けては、バイオ燃料の活用等も進んでいる。また航空機自体を電動化する電気航空機の開発も進んでいる。

カーボンリサイクルの中軸となるCO2の電解技術
カーボンリサイクルの中軸となるCO2の電解技術

 今回の6社協力によるCO2からのジェット燃料開発は、技術的には、既存の石炭火力等のCO2削減に貢献するとともに、それらのCO2を、新たに経済効率の高いジェット燃料に再利用できる循環型経済に資する面もある。今後、他の低炭素、脱炭素技術との競合の中で、経済的優位性を確保できるかどうかが課題だ。

https://www.toshiba-energy.com/info/info2020_1202.htm

http://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1903_02.htm