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経団連、「2050年カーボンニュートラル実現」に向け、新たな声明。技術開発の国家プロジェクト化等で国の援助要請。サステナブルファイナンスではタクソノミーを受け入れへ(RIEF)

2020-12-08 15:56:24

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 経団連は7日、「2050年カーボンニュートラル実現に向けた経済界の決意とアクション」と出した声明を発表した。菅政権の「2050年温室効果ガス排出量実施ゼロ」宣言に呼応したもので、重要な技術分野については国家プロジェクト化し、長期にわたり国家大規模な支援を求めるとともに、2030年の中期目標設定を提案した。サステナブルファイナンスについては、これまでEU等のグリーン事業を分類するタクソノミーに反対してきたが、今回の声明では受け入れる方針を示している。

 

 声明は、菅政権の「2050年ネットゼロ」宣言について「経済界として高く評価するとともに、(経済界も)政府とともに不退転の決意で取り組む」と述べている。

 

 声明は、現状認識として、「主要国・地域はグリーン成長を国家戦略・産業政策の柱と位置付け、新たな 競争に乗り出している 。現状に手をこまねいていれば、『経済と環境の好循環』 の実現はおろか、グリーン成長をめぐる国際的な競争に大きく劣後し、わが国 の産業競争力や立地拠点としての競争力を一気に喪失することになりかねない」と危機感を示している。

 

 こうした状況を打破するために、わが国産業の競争力強化につながるよう、研究開発や初期投資を支援しながら、イノベーションの創出とその内外市場への展開を図るとともに、ゼロエミッション・エネルギーが安価で安定的に供給される環境を整備する必要がある、と指摘。

 

 加えて、コロナ禍で疲弊した経済への需要刺激策として、次世代電力システムや水素供給システムなどの大規模インフラや、省エネ・脱炭素化に資する生産設備、輸送機器、住宅等への投資促進への取り組みも求めている。脱炭素経済社会への将来的な取り組みと、現下のコロナ対策とを、両方目指すことで、民間部門による自律的な投資を促進するとの位置付けだ。

 

経団連が提案する「カーボンニュートラル」での5つの重要分野
経団連が提案する「カーボンニュートラル」での5つの重要分野

 

 こうした取り組みを展開するうえで、新しいイノベーションの創出が欠かせないとして、政府による2050 年に向けたイノベーションの推進を求め、国家プロジェクトとしての取り組み支援を要請している。2030年の中期目標については、「明確かつ野心的な価格目標・性能目標等を官民で共有し、これらの目標実現に向けてイノベーションに挑戦する企業に対し、 国費による長期にわたる大規模な支援を継続的に行うべき」とした。

 

 公的資金への依存だけでなく、民間資金の活用としてサステナブルファイナンスにも言及している。その中で、EUが温室効果ガス実質ゼロを促進するグリーン技術等へのファイナンスとしてタクソノミーの法制化等の動きをしていることを紹介したうえで、「こうしたグリーンファイナンスに加え、イノベーションや、脱炭素社会へのトランジションに必要となる技術活動にも資金が動員されるよう取り組んでいくべき」と指摘した。

 

 経団連は昨年9月に、EUのタクソノミーについて、①「サステナブル」の判断は環境側面だけで、総合評価に立脚すべき②民主導の非連続的なイノベーションを阻害してはならない③拙速な国際標準化や国際金融規制への活用に反対――と全面的に否定する声明を出している。欧州委員会にもタクソノミー反対の意見書を提出、ロビー活動を展開してきた。https://rief-jp.org/ct4/94039

 

 今年10月には「サステナブルファイナンスの取り組み」を評価する声明を出したが、タクソノミーの取り扱いについては言及していない。今回の声明では、直接、タクソノミーを採択するとは表現していないものの、EUのタクソノミーを否定せず、むしろそうした「検討」に加えて、トランジションにも「資金が動員されるよう取り組むべき」と、トランジションファイナンス、あるいは同タクソノミーも視野に入れた表現に修正している。

 

 経団連が、サステナブルファイナンスに資する対応を進めることは望ましい。だが、昨年9月の「タクソノミーへの明瞭な反対意見」をそのままにして、なし崩し的に軌道修正を試みようとしているとすれば、日本の産業界の総本山であるはずの経団連としては、少々、みっともない。経団連の「タクソノミー反対」の立場は、EUの関係者の間では定着している。反対論を撤回するのならば、その理由を明確にして、国際的に発信するべきだろう。

 

 1年前の判断が十分ではなかったならば、そう説明することに躊躇する必要はない。その時点では、経済産業省ともすり合わせて意見をまとめたと思われる。同省の認識も含めて、これまでの反対論のどこが解消したのか、あるいは、どこをプラス評価するのかを、明確に説明することこそが、タクソノミー議論の進展につながるはずだ。https://rief-jp.org/ct4/107549

 

 今回の声明では、官民で取り組むべき課題の例示として、電力、水素、産業、運輸、民生の5分野で16の課題事例を示した。主な取り組み課題は、「電源の脱炭素化」「電力システムの次世代化」「水素還元製鉄等でのゼロカーボン製鉄技術」「電気自動車・燃料電池車等の電動車の開発・不空」「ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)等の普及など。

                     (藤井良広)

https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/123_honbun.pdf