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政府、2025年に向けたインフラ輸出戦略を改定。カーボンニュートラルを軸に。原子力発電輸出も。新規石炭火力発電輸出は「限定化」しつつ継続を確認(RIEF)

2020-12-11 09:46:26

kanteiキャプチャ

 

 政府は10日、経協インフラ戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)を開き、2025年に向けた新たなインフラ輸出戦略を決定した。菅首相による「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ」宣言に沿って、輸出インフラの柱の一つに「カーボンニュートラルへの貢献」を加えた。再生可能エネルギーと原子力を並列して重要項目としたほか、水素、蓄電池、CO2のカーボンリサイクル、洋上風力等を列記した。

 

 決定したのは「インフラシステム海外展開戦略2025」。これまでの「インフラ輸出戦略」の改訂版だ。それによると、新型コロナウイルス感染対策等の影響を踏まえつつ、多くの国々が気候変動対策に資する脱炭素・低炭素産業への投資を促しており、カーボンニュートラルに向けて世界でビジネスチャンスが拡大していると強調。「日本の優れた技術を活用して世界の脱炭素化及びグ リーン成長に貢献していくことが重要」としている。

 

 そのうえで、2025年に向けた戦略では、カーボンニュートラルとデジタル変革への対応等を通じて、産業競争力の向 上による経済成長の実現するとし、中心となるカーボンニュートラル実現に向けた技術の開発・実証を拡充し、脱炭素技術のインフラ海外展開を後押しする、としている。

 

 カーボンニュートラルの柱には、再エネと原子力を並列したほか、水素等の新たな技術の実現・ 普及にも産官学を挙げて取り組むとした。排出削減技術の開発・実証にあたっては、国内のみならず海外とも連携する。特に、水素・蓄電 池・カーボンリサイクル・洋上風力等のカーボンニュートラル実現に向けた技術の開発・実証をさらに拡充するとしている。

 

 石炭火力発電等については、「エネルギー情勢が急速かつ大きく変化している 中で、安価かつ安定的に調達できるエネルギー源が石炭に限られる国もある。途上国などでは石炭火力を選択してきた現実がある」と指摘。途上国の経済発展等に不可欠な電力アクセス向上等に資するため、相手国のエネルギー政策や気候変動政策に深く関わり、相手国の行動変容やコミットメントを促すことが不可欠」として、石炭火力輸出を続ける方針を維持している。

 

 具体的には、「相手国の発展段階に応じたエン ゲージメントを強化していく」として、石炭火力等を含めて、風力、太陽光、地熱等の再エネや水素、エネルギーマネジメント技術、CCUS/カーボンリサイクル等のCO2排出削減の選択肢等を展開する「脱炭素移行政策誘導型インフラ輸出支援」を展開するとしている。再エネ等に“隠れる”形だが、新規の石炭火力輸出についても明言している。

 

 新規の石炭火力発電事業は、相手国との二国間協議の枠組みを持たないなどの場合は、政府支援は行わないとすると限定した。だが、「エネルギー安全保障や経済性の観点などから当面石炭火力を選択せざるを得ない国に限り、相手国から、脱炭素化へ向けた移行を進める一環として、我が国の高効率石炭火力発電へ要請があった場合」は対応するとの方針は堅持している。

 

 このほか、これまでの日本の産業公害や廃棄物問題を多発させた経験や技術、制度などを基に、途上国での環境汚染の低減や公衆衛生の向上、海洋プラスチックごみ問題の解決に資する、環境イ ンフラ海外展開プラットフォームの形成や、廃棄物発電、リサイクル、大気汚染、水質汚濁、水銀処理の対策技術等の環境インフラの導入推進に取り組む、としている。

 

 原子力については、「米国、欧州、ロシア、中国等で、海外輸出も念頭に、重要な脱炭素技術として既存の大型軽水炉に加え、小型モジュール炉、高温ガス炉、高速 炉等の様々な革新的原子力技術の開発が進んでいる。我が国も、民間の創意工夫を活かしながら、海外連携を通じて革新的原子力技術の開発を行い、世界のカーボ ンニュートラルに貢献する」と強調している。

 

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keikyou/dai49/siryou2.pdf