HOME |商船三井と東北電力、硬翼帆式の風力推進船を「石炭運搬専用船」として開発契約締結。2022年の運航目指す。航海中のCO2排出量5~8%削減。積み荷の石炭で排出量増大につながる(RIEF) |

商船三井と東北電力、硬翼帆式の風力推進船を「石炭運搬専用船」として開発契約締結。2022年の運航目指す。航海中のCO2排出量5~8%削減。積み荷の石炭で排出量増大につながる(RIEF)

2020-12-11 21:55:14

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 商船三井と東北電力は10日、商船三井が開発してきた硬翼帆式風力推進装置(ウインド チャレンジャー)を搭載した石炭専用船の開発契約を締結した。東北電力が石炭火力発電で使用する石炭を輸送するという。2022年の運航開始を目指す。「風力船」は運行に伴う温室効果ガス排出量を、日豪航路で約5%、日北米航路で約8%削減できるという。ただ、運搬する積み荷が石炭であることから、Climate Bonds Initiative(CBI)のクライテリアでは「グリーン対象外」とみなされる。

 

 (写真は、ウインドチャレンジャー。積み荷を選べば、もっと格好良かったのに)

 

 商船三井は2022年の運航開始に向け、大島造船所 (長崎県西海市)で 本船の建造を開始する。 ウインドチャレンジャーは、帆船の帆が帆布ではなく、FRP製の硬翼帆を使用するのが特徴。硬翼形状なのでヨットなどの軟帆に比べ、風を推力に変換する効率に優れているという。https://rief-jp.org/ct4/94590

 

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 2009年に東京大学が主宰する産学共同研究プロジェクト「ウィンドチャレンジャー計画」として始まった。その後、2018年1月からは、産学共同研究を引き継ぐ形で、商船三井と大島造船所がプロジェクトの中心になってきた。翼は風の強弱によって上下に4段階で伸縮が可能。船上に複数の翼の増設が可能だが、今回は翼1本とみられる。船体は約235m、幅約43m。約9万9000㌧。

 

 「帆船」が現代に蘇り、運行時の温室効果ガス排出量を削減する「グリーン船」の時代の幕を開くことになる。だが、問題は積み荷の石炭。運行時の5~8%のCO2削減効果も、石炭火力が排出する大量のCO2排出量をカバーすることはできない。むしろ、同船が効率的に運航することで、石炭を大量に日本に運び込み、石炭火力発電の運転効率が高まり、CO2がますます排出されることにもなる。

 

 気候ボンド等のクライテリアづくりを進めているCBIがこのほど公表した船舶のグリーン評価では、船舶の脱炭素化・移行に貢献する燃料や技術として、風力の利用も、水素、アンモニア、先進的バイオエネルギー、メタノール(バイオや合成原料)、原子力、電力等とともに認められている。一方で、「化石燃料輸送用の船舶は「グリーン」とは認めないとしている。今回のような「石炭運搬船」は明確に「グリーン」から外れることになる。https://rief-jp.org/ct4/108646

 

 仮に商船三井が今回のウインドチャレンジャーの開発資金をグリーンボンドで調達すると、市場では「グリーンウォッシュ」の是非論を引き起こすのは必至だ。

https://www.mol.co.jp/pr/2020/img/20091.pdf