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三菱商事、ベトナムでの石炭火力発電事業「ビンタン3」から撤退方針。国際的論議の「ブンアン2」からは撤退せず。「日越国家プロジェクト」を理由。日本政府の判断が求められる(各紙)

2021-02-26 17:18:43

mitsubishishoujiキャプチャ

 

 各紙の報道によると、三菱商事は、ベトナムで計画中の石炭火力発電所「ビンタン3」からの撤退方針を固めた。ただ、国際的にも焦点になっている同じ石炭火力発電の「ブンアン2」事業は継続する方針で、環境NGOや投資家からの圧力は弱まりそうにない。

 

 日本経済新聞が報じた。三菱商事が撤退方針を固めたとされるのは、ベトナム南東部ビントゥアン省で進められているビンタン(Vinh Tan)第3石炭火力発電所事業。総事業費20億㌦、発電容量1980MW、年間発電量120億kWh。年間CO2排出量1100万㌧。2020年の建設開始予定が延びており、完成見通しの2024年もずれ込むとみられている。

 

 ビンタン3事業は、香港のCLPホールディングスと三菱商事の子会社「Diamond Generating Asia(DGA)」の合弁会社のOneEnergy Ventures Limitedが49%、ベトナムのElectricity of Vietnam Group (EVN) 29%、タイのThai Binh Duong Group 22%を出資して設立したSPVが事業主体になっている。

 

 ビンタン発電所は、第2発電事業が2014 年に稼働したのを皮切りに、2018年に第4事業、19年に第1事業、同年に第4拡張事業の順で稼働してきた。三菱商事は、第4拡張事業にも参画している。こうした集中建設の結果、同地域では、発電所由来の大気汚染物質が増大し、貯炭場やアッシュ・ポンド等による汚染も深刻化している。また海洋に面していることで、沿岸部のサンゴ礁やウミガメなどへの海洋汚染等の懸念が示されている。

 

完成したビンタン4の発電所
完成したビンタン4の発電所

 

 このため、ビンタン3の融資団に参加していた英スタンダードチャータードや、金融アドバイザーを務めた同HSBCが気候リスク等を理由に撤退し、建設着工が遅れていた。報道によると、三菱商事が撤退方針を固めたのは、焦点となっている「ブンアン2」は日越国家プロジェクトで、ビンタン3は同社が独自で判断できることと、着工時期も延びているため撤退を決めた、としている。https://rief-jp.org/ct10/98769

 

 そうだとすると、ブンアン2の成否については、「2050年ネットゼロ」を宣言した日本政府が撤退の判断をすべきということになる。今回の三菱商事の判断は、これまで「計画中」「建設中」の火力発電は停止の対象外としてきた金融界等の主張とも異なる。ビンタン3もブンアン2も、ともにCO2排出量が少ないとされる超々臨界圧火力発電(USC)で共通する。ただ、USCは天然ガス発電の約2倍のCO2を排出することから、「2050年ネットゼロ」にはなじまないとされている。

 

 ブンアン2の事業継続については、一時、小泉進次郎環境相が同事業に公的金融機関の国際協力銀行(JBIC)が融資を検討していることに反対の姿勢を示した。しかし、小泉氏はその後、「同事業は日仏首脳会談共同声明で協力を確認している案件であることなどを踏まえ、公的支援を実施する方向」と発言を撤回している。http://rief-jp.org/ct5/99596

 

 三菱商事では、「今後は環境負荷の低い液化天然ガス(LNG)火力や太陽光発電など再生エネルギー網の建設で協力する」としているという。

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210226&ng=DGKKZO69444130W1A220C2MM8000