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英、洋上風力に13兆円 発電能力は原発30基分(各紙)

2012-07-06 06:31:48

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各紙の報道によると、英国が官民挙げて世界最大の洋上風力発電事業に乗り出している。13兆円を投じ7000基以上の風車を沖合に設置し、3200万キロワットの電力を発電する。これを軸に2020年時点での英国の総電力需要の約3割を再生可能エネルギーでまかなう計画。英国は、裾野の広い風力発電事業を振興し雇用を創出するとともに、今後の国際規格作りも主導する見通し。日本企業も三菱重工業などが関連機器の納入などで参入に動いている。

計画する発電能力は原子力発電の約30基分に相当し、火力や原子力など従来の発電設備が老朽化する問題に対応する。主要各国の20年までの洋上風力の開発計画は、中国3000万キロワット、米国1000万キロワット、ドイツ900万キロワットなどとなっており、現時点の計画では英国が世界トップだ。


 政府の補助金や民間企業の投資を合計した事業規模は1000億ポンド(約13兆円)。英シンクタンクの経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)は、10万人の雇用と、国内総生産(GDP)の0.4%の押し上げ効果を見込む。




 エネルギー対策としてだけでなく新規産業としての期待もかける。風車の部品は1万~2万点と裾野が広い。「日本で1970~80年代に広がった自動車産業のように一大産業を形成する」(英国周辺の海域を管理するクラウン・エステート)考えだ。




 既に英国本島の周辺海域に9つの地区が設定され、デベロッパーの入札が終了。デベロッパーが機材などの発注先の選定に入っている。




 欧州の発電機メーカーは相次ぎ工場建設を表明。独電機大手シーメンスは英東部で工場スタッフなどに700人の雇用を決めた。各社は輸送コストを下げるため、英国内でなるべく多くの部品を調達する方針だ。




 英国内の部品供給網は未熟で「当面は実績のある欧州大陸の企業がサプライチェーン(供給網)の中心」(三菱重工業)とされる。英政府は長期的には国内での部品やサービスの調達率を50%以上にしたい考えだ。

海底地質調査や、洋上作業船の運営、洋上で働くエンジニアなど、北海油田の開発で培った技術や人材をシフトできるため、英国産業には洋上風力は受け入れやすい。


 日本勢では、受注を目指して三菱重工業が英国の油圧システム開発ベンチャーのアルテミス社(本社エディンバラ市)を10年に買収。従来の歯車式の洋上風車に比べ出力が約2倍の油圧駆動式の発電機の実用化にメドをつけ、英国での現地生産も準備中だ。




 丸紅と官民ファンドの産業革新機構は英シージャックス・インターナショナル社を買収、洋上で風車を海底に固定する工事での参入を見込む。住友商事は事業全体への出資を計画する。ケーブル会社なども受注の可能性がある。




 さらに、英国は洋上発電で他国に先行して実績を積むことで同分野での国際基準策定の主導権を取りたいとの思惑もあるとみられる。日本では、産学が協力し風車を海底に固定せず海上に浮かべる浮体式風力発電を試験する動きも始まっている。日本の関係者の間では「国際基準作りで日本が出遅れないようにすべきだ」との声も出ている。