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日本政府、原発ゼロ選択か-長期エネルギー計画で(WSJ)

2012-08-22 13:12:30

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 【東京】政府当局者が21日明らかにしたところによると、国民の間に原発反対の声が根強い中で、政府は長期エネルギー計画で2030年をめどに原発ゼロを目指すことを決定する可能性が大きくなってきた。野田佳彦首相は昨年3月の福島第1原発事故を受けて、エネルギー・環境会議を設置し、2030年に総発電量に占める原発比率について全廃の0%、15%、現状水準の20~25%の3つの選択肢を提示した上で、長期戦略を勧告するよう指示した。

 政府は、年内と予想されている総選挙を前に9月に最終的な決定を発表する見通し。3つの選択肢のうち中間の15%を選択すると広く予想されていたが、政府当局者は21日、エネルギー・環境会議はゼロ・オプションを選択する可能性が最も大きいとの見方を示した。ある当局者はダウ・ジョーンズ通信に対し「原発ゼロ社会が我々の希望であり目標だ」と指摘し、「我々はそれに向かっており、それに強く反対する人はいないと思う」と述べた。

 福島原発事故の後、稼働していた日本の原発50基は次々に定期点検入りし、すべて運転を停止した。7月に夏の電力需要増大を考慮して、関西電力大飯原発2基が再稼働したが、これをきっかけに首相官邸前で定期的に行われている原発反対デモの参加者は最大7万5000人に膨らんだ。

 野田首相は8月初め、原発ゼロの場合の課題を検討するよう枝野幸男経済産業相らに指示、これを受け枝野経産相は電力料金の値上がりの負担を分かち合う合意が出来れば原発ゼロを支持する姿勢を明らかにした。

 国民の間では、特に消費税を3年間で10%に倍増させる法案が成立して以降、同法案を推進した野田首相と与党・民主党に対する反発が強く、原発ゼロを目標に掲げるのはこれを和らげる方策とみられている。最近の世論調査では、野田内閣の支持率は30%を大きく割り込んでいる。また、原発の再稼働に対する不安も高まっている。

 政府の姿勢が柔軟化しているもう1つの兆候として、野田首相が22日に、官邸前の抗議デモを主宰している反原発団体の代表者と面会することが挙げられる。首相はこれまで、反原発団体との面会を拒否してきた。

 一方産業界は、電力価格の高騰に苦しんでいる製造業の海外移転を促進してしまうとして、原発廃止に反対している。経団連環境本部の長谷川雅巳主幹は、政府は物言わぬ多数派を無視していると批判、「ドイツが11年5月に原発全廃を決定できたのは他の欧州諸国と送電網がつながっており、必要な時にはフランスから電力を輸入できるからだ」と指摘し、日本はドイツとは置かれている状況が違うと強調する。

 同氏は「エネルギー安保の観点から日本はエネルギー源の多様化方針を維持する方が賢明だ」と訴える。

 

http://jp.wsj.com/Japan/Economy/node_498460/?nid=NLM20120822