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凧型風力発電機、イタリアで開発(National Geographic) さすがイタリア人。再生可能エネも おしゃれだね

2012-09-27 16:50:12

イタリアで開発された凧型風力発電機「カイトジェン(KiteGen)」。
イタリアの発明家マッシモ・イッポリート(Massimo Ippolito)氏が開発した凧型風力発電機、カイトジェン(KiteGen)は、自在に動くクレーンのようなブームの先から凧を飛ばし、土台のウインチを回転させて電気を生み出す。空中風力タービンに取り組むマカニ・パワー(Makani Power)社の創業者たちのように、イッポリート氏もカイトサーフィンからヒントを得た。

イタリアで開発された凧型風力発電機「カイトジェン(KiteGen)」。


同氏は書籍『Build Your Own Small Wind Power System』(McGraw-Hill/TAB Electronics, 2011)のインタビューで、翼の形をした凧はコンピューターで能動制御されており、風に対して最適な方向に保たれると説明している。曲芸飛行用のスタントカイトのように伸びた2本のケーブルは、土台のウインチにつながっている。上空で八の字旋回させながら飛ばすと、ケーブルがウインチを回す仕組みだ。

 イッポリート氏は、高度800~1000メートルまで凧を到達させたいと考えている。一般的な1.5メガワットの地上風力タービンと比べると6~8倍の高さだ。高価な発電装置はすべて地上に置き、コストやリスク、保守時間の削減を目指す。最終的には、多数のカイトジェンを使用した発電所を建設し、1000メガワット(大規模な石炭火力発電所と同等)を達成したいという。

 カイトジェンの誕生には、さまざまなプロトタイプやアイデアが貢献している。例えば1980年代、オーストラリアにあるシドニー工科大学の工学者ブライアン・ロバーツ(Bryan Roberts)氏は、ヘリコプターに似た小さな凧型風力タービンのプロトタイプを開発している。最終的には高度約4600メートルまで上昇させる構想だったという。強い風を受けて浮遊する凧から非常に長いテザー(ロープや紐)を通じて地上にエネルギーが送られる仕組みだ。ロバーツ氏のアイデアは、同氏がアメリカのカリフォルニア州オーロビルに設立したスカイウィンドパワー(Sky WindPower)社に引き継がれており、現在「フライングジェネレーター(Flying Generator)」という“空飛ぶ発電機”を開発中だという。

 1970年代以降、凧型風力発電機の開発は「ラダーミル(Laddermill)」というコンセプトを中心に進められた。連凧(れんだこ)を高高度に展開するアイデアだ。風の向きに対する凧の角度(迎角)を変えることで、オペレーターは地上から凧の上昇や下降、円運動を操作し、地上に運動エネルギーを伝えることができる。

 2007年、オランダの宇宙飛行士で物理学者のウッボ・オッケルス(Wubbo Ockels)氏が、4キロワットバージョンのラダーミルに関する研究を発表した。高度1000メートルまで連凧を上昇させるタイプで、凧が揚がると地上の発電装置に巻き付けられたテザーが引っ張られ発電機を駆動する。テザーが完全に伸びきったら、凧の角度を変えて下降させて、テザーのゆるみを戻す。このサイクルが繰り返される。非営利団体(NPO)、IASTED(International Association of Science and Technology for Development)が主催する国際会議の議事録「European Power and Energy Systems」に掲載された研究報告によると、オッケルス氏の研究チームは、2キロワットの実験に成功しているという。アメリカの一般家庭でエアコン以外の電力消費をカバーできる発電量だ。

 同様のコンセプトは、イタリアの新興企業トゥインドテクノロジー(Twind Technology)社も採用している。2つのバルーンをつないだ凧型風力発電機で、それぞれのバルーンにはパラグライダーのように空気でふくらむ帆が付いており、帆の膨張、収縮に応じてバルーンは前後に移動する。テザーの動きが地上の発電機に伝わり、木を切ったり、エンジンを動かしたりする動力が生まれるという。

◆環境への影響

 スタンフォード大学カーネギー研究所のケン・カルデイラ(Ken Caldeira)氏らが今月「Nature Climate Change」誌に発表した論文では、風力エネルギーを現在の石炭のように主要エネルギー源として利用した場合、地球物理学的に重大な制約がないかを考察している。例えば、大型の風力発電設備によって大気が受ける抵抗が増加し、気候に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。近年、大規模なウィンドファームに着目し、気温や降水量への影響を予測する論文が複数発表されている。

 カルデイラ氏のチームは気候モデルを分析し、現代のエネルギー消費量の約100倍レベルで風力発電設備を導入すれば、深刻な気候変動が起きると結論づけた。タービンの抵抗が大気循環のパターンを変えてしまい、極地への熱の移動を妨げるのだ。ただし、化石燃料まで含めた現代のエネルギー消費をちょうど満たすレベルであれば、空気抵抗による気温変化はわずか摂氏0.1度で、降水量も1%しか変わらない。「環境への影響は小さく、対処可能な範囲だ」とカルデイラ氏は説明する。

 もちろん、人間による開発が風のパターンを変えてしまう例は風力タービンだけではない。「農地用の森林伐採や、都市の建造など、さまざまな変化が要因になり得る。大気中の抵抗が変わるような開発をすれば、必ず大気循環に変化が生じる」。

 カルデイラ氏のチームは次のステップとして、表面をすべて水で覆われた仮想の惑星に浮かぶ風力タービンのモデルを作成している。条件を単純化し、「思っていたより複雑だった」物理特性を解明する計画だ。空中風力タービンには冷却効果もあると考えられており、温暖化した地球を冷やす地球工学的手法としても同時に研究したいという。

Photograph courtesy KiteGen