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滋賀県 2030年に電力会社依存率75%へ引き下げ 県内15カ所でメガソーラー建設(スマート・ジャパン)

2013-09-23 21:35:03

図1 滋賀県の電源構成。出典:滋賀県商工観光労働部
図1 滋賀県の電源構成。出典:滋賀県商工観光労働部
図1 滋賀県の電源構成。出典:滋賀県商工観光労働部

滋賀県は電力会社に依存する現状を抜本的に変えるために再生可能エネルギーの導入を急いでいる。太陽光発電を中心に2030年までに導入量を20倍に拡大して、ガスコージェネレーションの普及と合わせて依存度を75%まで引き下げる。琵琶湖の周辺でメガソーラーの建設が続々と始まった。[石田雅也,スマートジャパン]


滋賀県の北部は原子力発電所が集まる福井県の若狭湾から20キロメートル以内の至近距離にある。以前から脱・原発の姿勢を鮮明にしてきたが、県内の電力事情を見ると再生可能エネルギーの導入量が少なく、電力会社に対する依存度は極めて高い。

こうした状況を変革するために、2013年2月に「再生可能エネルギー振興戦略プラン」を策定して本格的な取り組みを開始した。電力会社による大規模電源に依存する比率を2010年の93%から2030年に75%まで引き下げる方針だ(図1)。

県内の電力使用量を節電によって10%少なくする一方で、ガスコージェネレーションと再生可能エネルギーの導入量を大幅に伸ばす。特に再生可能エネルギーは2030年までに20倍の規模に拡大する意欲的な目標を掲げている。

とはいっても日本で最大の琵琶湖があることを除けば、他県と比べて資源に恵まれているわけではなく、打つべき手は限られている。導入しやすい太陽光発電を可能な限り普及させることが最優先の課題になる。

滋賀県は2030年の目標に加えて、短期的な2017年の導入量も設定した。太陽光・風力・小水力・バイオマスの4種類の中で、ほぼ100%近くを太陽光発電が占める。2010年と比べて住宅用を6倍に、非住宅用を23倍に拡大しなくてはならない。この高いハードルをクリアできなければ、その先の2030年の目標達成はいっそう難しくなってしまう。

急速に拡大させる必要がある非住宅用の太陽光発電では、大規模なメガソーラーを増やすことが最も効率的である。事業者と土地所有者をマッチングさせる支援活動に力を入れた結果、県内の15カ所でメガソーラーの建設が始まった。このうち14カ所は2013年内に稼働する予定だ。15カ所の発電能力を合計すると約25MW(メガワット)になり、2017年の目標の2割に相当する。

建設中のメガソーラーで規模が最も大きいのは、物流システムで世界有数のメーカーであるダイフクが滋賀事業所の中で進めているものだ。全体で120万平方メートルある事業所の敷地のうち5万平方メートルに太陽光パネルを設置して、4.4MWの発電を可能にする。2013年9月から運転を開始する予定で、年間の発電量は430万kWhを見込んでいる。

琵琶湖に面した近江八幡市では、滋賀食肉公社が食肉センターの遊休地を活用して2MWのメガソーラーを建設中だ(図2)。このプロジェクトの特徴は、食肉公社が初期投資なしで発電事業に取り組めるスキームを採用した点にある。shigashokuniku_megasolar

大阪ガスグループのエナジーバンクジャパン(EBJ)が資金調達を含めて発電事業者になり、食肉公社は土地の提供と設備の保守管理を請け負う。EBJの売電収入の一部を食肉公社が受け取ることができる仕組みだ。土地所有者にとってはリスクが少ない形で長期に収入を得られるメリットがある。

すでに運転を開始したメガソーラーの中では、甲西陸運の「甲陸クリーンエネルギーセンター」がユニークだ。湖南市にある物流センターの倉庫の屋根全面に4200枚の太陽光パネルを設置して、2013年2月から1MWの規模で発電を始めた。物流施設の屋根を使ったメガソーラーとしては全国でも先進的な事例になる。

この物流センターでは同時にバイオマスの活用にも取り組んでいる。近くにある食品メーカーのカルビーの工場から廃油を購入して、物流センター内に新設したプラントでバイオディーゼル燃料に精製する。バイオ燃料は配送用のトラックやフォークリフトなどに利用する。月間で最大8000リットルの廃油を処理することができる。

滋賀県内では太陽光発電を中心にしながら、バイオマスの導入も徐々に進んでいる。現時点の導入量は少ないものの、2030年に向けた計画の中では非住宅用の太陽光発電の次に大きな成長を見込む。

バイオマスの分野で滋賀県が積極的に取り組んでいるのが下水汚泥の燃料化だ。下水を処理するための浄化センターが5カ所にあり、そのうちのひとつ「湖西浄化センター」にバイオ燃料の製造設備を建設する。3年後の2016年に運転を開始する予定で、製造したバイオ燃料は近隣の石炭火力発電所などで利用する計画だ。

もともと下水汚泥を燃料化するプロジェクトは5年前の2008年に、琵琶湖をはさんで対岸にある「湖南中部浄化センター」で実証実験に取り組んだのが始まりである。この浄化センターでは小規模ながら太陽光発電を2005年から開始しているほか、下水熱を利用した空調システムも導入するなど、さまざまな再生可能エネルギーを先進的に取り入れている。

太陽光に加えて、琵琶湖がたたえる豊富な水資源を生かしながら、脱・原発に向けた再生可能エネルギーの拡大計画は着実に広がってきた。

2012年版(25)滋賀:「琵琶湖のまわりに降り注ぐ太陽光、2030年に発電能力100万kWへ」

 

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1309/17/news022.html