HOME8.温暖化・気候変動 |JR東海のリニア新幹線で日照障害 陰る太陽光発電 補償の法律なし(東京) |

JR東海のリニア新幹線で日照障害 陰る太陽光発電 補償の法律なし(東京)

2014-01-28 16:54:40

「グロスルーフ」が運営する太陽光発電施設。すぐ近くにリニアの高架橋が建設される=長野県喬木村で
「グロスルーフ」が運営する太陽光発電施設。すぐ近くにリニアの高架橋が建設される=長野県喬木村で
「グロスルーフ」が運営する太陽光発電施設。すぐ近くにリニアの高架橋が建設される=長野県喬木村で


JR東海のリニア中央新幹線計画で、高架橋などによる日照阻害で減った太陽光発電の発電量について、JRが国の指針に基づいて補償しない考えを示し、ルートに当たる長野県喬木(たかぎ)村の発電施設から売電収入の落ち込みを心配する声が出ている。東日本大震災以降、急速に普及が進む太陽光発電だが、日照阻害による損失を補償する法律はなく、専門家は「国が早急に対応するべきだ」と指摘している。 (西川正志)


 リニアが通る喬木村の阿島北地区。JRが昨年九月に出した環境影響評価(アセスメント)準備書で示されたルートから北へ約五十メートル離れた場所で、愛知県稲沢市の建設会社「グロスルーフ」が出力百六十キロワットの太陽光発電施設を運営している。固定価格買い取り制度を活用し、年間売電収入は約八百万円を見込む。




 発電が始まったのは二〇一二年十月。営業部長の西元英人さん(53)は「リニアがこんなに近くを通るなんて思わなかった。全国的に見ても日照時間が長く、高い建物がないから選んだ場所なのに」と戸惑う。




 準備書から、高さ四十メートルの高架橋が地区を東西に横切り、リニアの敷地境界線から北側五十一メートルにわたって、冬至日の日中には五時間以上の日陰ができると予測された。




 グロスルーフの施設が日陰になるかはまだ分からないが、地区の地主から受けていた新たな太陽光発電の設置依頼は断らざるを得なくなった。西元さんは日陰になると発電量が七割ほどに落ち込むと試算し、「影響が出たら移転費用などを求めたい」と話す。




 日照問題に詳しい三平(みひら)聡史弁護士(第一東京弁護士会)によると、日当たりを確保する日照権は法律で明文化されていない。日照阻害による影響の補償については国の指針があるだけという。




 JRの見解の根拠になった国の指針「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」が定められたのは、太陽光発電が普及していない一九七六年。指針は暖房や照明の費用を補償対象としているが、太陽光発電には触れていない。




 環境エネルギーシステムが専門の東京工業大学特命教授の柏木孝夫氏は「太陽光発電が普及している現状にルールづくりが追いついていない。このまま太陽光発電の普及が進めば、大きな問題になる」と警鐘を鳴らす。




 ルールづくりが進めばJRの補償に対する方針が変わる可能性もあるが、現時点でJRは「国の指針にのっとって適切に事業を進めていきたい」としている。


◆各地でトラブル増加




 太陽光発電は、二〇一二年七月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度で一気に導入量が増えた。しかし法整備は進んでいないのが現状で、トラブルは増加傾向にある。




 資源エネルギー庁によると、日本では一九七〇年代から研究開発が進められ、九〇年代以降は一般住宅にも普及。




 制度開始後の一年間で、それまでの導入量の七割に当たる三百九十一万キロワットが増え、二百七十八万世帯分の消費を賄える九百五十一万キロワットになった。




 太陽光発電をめぐるトラブルの相談を受け付けているNPO「太陽光発電所ネットワーク」によると、建物などの日陰で発電量が減ったという相談も増えている。一方で、弁護士費用が必要になることなどから、損害賠償を求めて提訴に踏み切るケースは極めて少ないという。




 都筑建代表は「太陽光発電を設置している人は建物を建てる事業者からの補償金だけで納得せざるを得ないのが現状だ。泣き寝入りしている人も相当、多いのではないか」と指摘する。

 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012802000246.html