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気候変動への関心、微増=米で「気候コレクトネス」の風潮(Reuters)

2011-08-30 12:44:25

突然の気候変動とみられる原因で死んだ大量の魚(11年5月29日、フィリピン・タリサイ)
【ロンドン28日ロイター時事】28日に発表された調査会社の米ニールセンのネット世論調査結果によると、世界の人々の気候変動への関心はここ2年間でわずかにしか高まらなかった。消費者は差し迫った経済的な懸念の方により多くの関心を寄せていたという。

 

調査によると、51カ国の2万5000人のインターネットユーザーのうち、69%が気候変動が心配だと答えた。数字は09年の66%をわずかに上回ったが、07年の72%を下回った。

 この調査のアドバイザーで、オックスフォード大学環境変化研究所の上級客員研究員マクスウェル・ボイコフ氏は「ここ2年間、雇用の確保、地域の教育の質、それに経済状況といった差し迫った懸念にメディアの関心が向かい、気候変動への注目が弱まってしまった」と述べた。

 地球温暖化防止条約への期待も過去2年間で薄れた。国連の関係会合で温室効果ガス削減の拘束力ある条約で合意できずにいるためだ。

 消費者はアンケート調査で、最も心配な問題として、気候変動ではなく、殺虫剤の使用、包装材のごみ、それに水不足といった日常生活により直接的な影響をもたらすようなテーマを挙げた。

 世界最大の温室効果ガス排出国である中国では、気候変動が心配だと回答した人の割合がここ2年間で77%から64%に落ちた。また世界第2の排出国で、京都議定書を批准していない唯一の先進国である米国では、気候変動が心配だと回答した人の割合が48%にとどまり、07年の62%、09年の51%からさらに減少した。一方、心配だと回答した人の割合が最も多かった地域は、中南米、アフリカ、それにアジア太平洋だった。

 ニールセン米国部門のトッド・ヘール副社長は「多くの米国人には家計のやりくりなど金銭面の懸念が残っているため、これまで以上に気候変動やその他の環境問題への懸念をますます示さなくなっている」と述べた。

 ボイコフ氏はまた、ロイター通信に対し、米国の関心の度合いが他の地域よりも低いことは、米国が温室効果ガス排出量の多い産業や電力部門の一大センターという立場にあることを反映しているかもしれないとし、こうした産業界や電力業界は気候変動対策法案に強く反対するロビー活動を展開していると指摘した。

 同氏は「『政治コレクトネス(人種・宗教・性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いること)の姿勢に代わって『気候コレクトネス』が流行しつつある兆候もある」と指摘、「共和党の予備選と来年の本選挙を考えた場合、右派の候補者たちのこうした『気候コレクトネス』は、気候変動の原因は人間の行動にあるとの考えに対する反論ないし異議申し立てを意味する場合がしばしばだ」と語った。

 気象変動を心配しないと答えた米国人21%のうち、大半は人間に責任があるのではなく自然上の理由のせいだと答えている。




突然の気候変動とみられる原因で死んだ大量の魚(11年5月29日、フィリピン・タリサイ)


http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2011082900259