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「世界の穀倉」に気象変動の影=米国でもひそかに対応(Reuters)

2011-09-06 20:12:18

気候変動で収量に変化が顕著な穀倉地帯
 【シカゴ5日ロイター時事】世界の穀倉地帯であり、食糧難に悩む国々の頼みの綱となっている米国は、過去半世紀にわたって驚くべきほど多くの食料を生産してきた。ほとんどの米国人は毎年、十分な穀物、食肉、乳製品、果物、それに野菜などの食品を手に入れられることが当たり前のように感じている。

 

米国のメディアでアフリカやアジアなどの地域の干ばつや飢饉(ききん)の恐ろしい映像が流れると、米国は通常真っ先に、その底なしの食料庫の中から食糧を支援したり、食料の空中投下を行ったりした。米国が世界全体の輸出量に占める比率はトウモロコシが半分、大豆が40%、小麦が30%だ。

 しかしその米国でも、気候変動の懸念から警鐘が鳴っている。一部の科学者や農学者は、米中西部の作物の生育に実際見受けられる影響に懸念を強めている。科学者らによると、気候変動に懐疑的な農業従事者のみならず、政府当局者までもが、気候変動に備えてひそかに対応しようとしている。別の農機具を調達したり、作付け方法を変更したり、影響度の調査を行ったりしているのだ。

 アイオワ州立大学のユージーン・タクル教授(農業気象学)は、「われわれに長期間やっていけるだけの食料在庫はない。世界供給量で約2週間分ないし3週間分だ」と述べた。その上で「エアコン、かんがい施設、それに技術の向上によって、われわれは気候に鈍感になっている。われわれが気候変動にどれほど脆弱(ぜいじゃく)か再考する必要がある」と語った。

 同教授によると、米中西部の農家は既に気候変動に対応しつつある。同教授は「農家の人々は気象変動を信じないと口では言うが、彼らのカネの使い方を調べてみると、これに対応しようとしていることが分かる」と述べた。例えば、中西部では雨がちになった春に行う種まきをより速く、より密にすることができるように、従来よりも大型の機械を導入しているという。

 しかし多くの気候変化は、メディアで大々的に伝えられる山火事や洪水、竜巻などの出来事よりももっと微妙で隠された現象だ。タクル教授は、例えばトウモロコシ地帯では、湿度が高くなっている傾向が認められ、夏の夜間温度上昇につながっていると指摘、それが近年のトウモロコシの単位当たり収量の減少となった公算が大きいと述べた。トウモロコシは、日中は高温だが、夜間は涼しいのを好む。

 米農務省も今年、作物と気候変動の関係を研究する初の助成金を承認した。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2011090600310

気候変動で収量に変化が顕著な穀倉地帯