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太陽光発電システム、転換点を迎える市場 中国メーカーが欧州から米国や日本にシフト (各紙)

2011-10-03 13:47:42

太陽光発電システムの市場が大きな節目を迎えている。その主因は、2010年に世界の約8割を占めた欧州市場が急激に縮小したことだ。代わって、ここに来て伸びているのは米国や中国の市場である。さらに、太陽光発電システムを選ぶユーザーの視点にも変化が見られる。これまでは初期コストに注目する人が多かったが、長期的な信頼性や収益性を重視するケースが増えている。



■First Solar社は過去最高の販売、売り上げは下落


 2011年8月、米Solyndra社など米国の太陽光発電システム・メーカー3社が相次いで経営破綻に陥った。欧州市場の縮小によって、世界的に太陽光発電システムが供給過剰になり、単価下落から業績が悪化したからだ。加えて、欧州市場でシェアの高い中国メーカーが、縮小した欧州市場分を補おうと米国市場に攻勢をかけ、米国メーカーのシェアを奪ったことが背景にある。




  米最大手のFirst Solar社も2010年第4四半期(10~12月)以降、売上高が減っている(図1)。2011年第2四半期の販売量は前年同期比40%増の約483MW(メガワット)と過去最高に達したが、売上高は2010年第3四半期のピークに比べて33%減と大幅に減った。その結果、営業利益率は27%から12%へと悪化した。CdTe(カドミウム・テルル)型という、シリコンを使わないタイプの発電素子を使うことでコストを下げ、それを武器にこれまで順調に売上高を伸ばしてきたが、中国メーカー参入による価格下落までは避けきれなかった。





■欧州市場の縮小が重くのしかかる中国メーカー


 攻勢を仕掛けた側の中国メーカーも、決して順調とは言えない。世界最大手の中国Suntech社の出荷量は、2010年第4四半期から3四半期連続で横ばいが続いている(図2)。米国市場の攻略で出荷量は維持しても、単価が下落している分、売上高は減少した。中国メーカーの成長は欧州市場の成長とともにあり、欧州市場の縮小は中国メーカーに新たな市場開拓を迫っているのだ。





 欧州市場は、2008年までドイツやスペインを中心にフィード・イン・タリフ(FIT)制度によって急速に拡大した。一気に生産量が増えたため、太陽光発電システム向けのシリコン材料が足りなくなり、材料価格が高騰するほどだった。市場拡大に乗じて、中国メーカーが膨大な投資で生産能力を高め、規模を大きくした時期である。

しかし2009年、スペインが政策を方向転換した結果、同国の市場が一気に縮小した。通年でみればドイツの市場などが拡大したので、スペインの落ち込みを補って欧州全体の需要量は維持された。しかしその裏で、メーカー同士の壮絶な闘いが静かに進行していた。


例えば、長らくドイツでトップの座に君臨してきたドイツQ-Cells社。ドイツ市場がスペインを補うほど拡大したにもかかわらず、2009年にトップの座をFirst Solar社に明け渡した。しかし、First Solar社の地位も安泰ではなかった。そのすぐ後ろには中国メーカーが控えていたからだ。2010年に欧州市場は前年の2倍に拡大したものの、そこではSuntech社やJA Solar社など中国メーカーの躍進ばかりが目立った。





 2011年に入り、欧州市場に再びブレーキがかかった。政策転換に伴い、チェコとドイツで需要が落ち込んでいるためである。これをフランスとイタリアの需要増で補いたいところだが、厳しい状況だ。





 欧州太陽光発電協会(EPIA)によると、欧州市場は2011年に前年比で約36%減少する見通しである。各国政府が太陽光発電の導入を促進する政策を打ち出せば、ほぼ横ばいを維持する予測だが、現在の欧州で導入促進を強化する国はない。2012年はさらに悲観的で、通常であれば同20%減と縮小し、政策で導入を促進してもマイナス成長になるとEPIAは予測している。中国メーカーは欧州市場以外に活路を見いださなければ成長できない状況である。





■日本メーカーは欧州への輸出を増やす





 一方で日本メーカーは好調に販売量を増やしている。2011年第2四半期は、縮小している欧州市場向けを中心に輸出を伸ばした(図3)。価格は高くても長期信頼性や設計ノウハウが高く評価されているようだ。中国メーカーが米国市場を狙うのは、欧州市場が単に全体として縮小したからだけではなく、欧州のユーザーが価格だけではなく品質も重視し始めたからだ。品不足が深刻だった2008年に、品質はともかく出荷を重視したツケが回ってきているようだ。


 ただし、日本メーカーの国内向け出荷は減少した。Suntech社など中国メーカーが米国市場だけでなく、余剰電力の買い取りが再開した日本市場にも参入しているからだ。低価格を武器にシェアを拡大している。2012年度、日本で全量買取制度が始まれば、メガソーラーへの投資が活発化する。





 ユーザーが長期的な視野を持っている点では、日本も欧州と変わりないだろう。しかし、中国メーカーも技術力をつけてきている。それを上回る長期的な信頼性や、保守・サポート力といった日本メーカーの強みを打ち出せなければ、米国メーカーの二の舞になるだろう。