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気候変動枠組条約、その総体の危機 パナマ会合報告(FOE Japan)

2011-10-21 10:47:44

10月1日~7日、パナマ共和国パナマ市にて国連気候変動枠組条約の特別作業部会パナマ会合が行われました。この会合は、2011年11月28日から12月9日まで、南アフリカ共和国ダーバン市で行われる気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)と京都議定書第7回締約国会合(CMP7)を目前とする最後の会合となります。 FoE インターナショナルは、最終日の7日にプレス • コンフェレンスを開きました。下記は、 FoE インターナショナル、 FoE マレーシア、サード ワールド ネットワークの代表者の一人であるミーナ ラマン氏の報告です。   気候変動枠組条約、その総体の危機 京都議定書の‘乗っ取り’への試みについては、リンさんが既にお話されました。しかし、このパナマでの気候交渉において起きているさらに恐るべき事は、気候変動枠組条約そのものを書き換えようとする、(先進国による)具体的で明確な意図の現れなのです。つまり、京都議定書のみが危機に瀕しているのではなく、私たちは、枠組条約の制度そのものの変革への試みを目の当たりにしているのです。 これは体制交代とも言える変革であり、新たな条約による‘乗っ取り’です。そして、この新しい条約は、(すべての人々に対する) 公平性 を認めず、先進国と途上国の間に存在すべき 共通だが差異のある責任 を認めません。さらにこの条約は 歴史上の責任負担 を無視し、私たちが(必要とし)求めている条約とは全く違う条約を設立しようとする試みです。 戦争への資金調達 vs. 気候変動への資金調達 また、(パナマ会合において)カンクン会議での決定を撤回しようとする動きが見られます。 EU は、長期気候資金の動員について、 EU がこの資金の調達を行わないという見方には誤解があり、単にさらに検討する時間が必要であり将来の金融状況に合わせて調達を行う、と発言しています。しかし、カンクンでの交渉が行われていた頃、世界は既に金融危機に見舞われていたのであり、気候変動による危機はさらに長い間続いていた事を考慮すると、私たちはいったい何が問題であるのかを承知していたといわざるを得ません。 また、この地球とその貧しい人々を救うための気候対策への長期資金への公約は全く見受けられないにも関わらず、戦争や軍事費には、これまで数多く見られるように多額のお金が用意されています。つまり、戦争のためにはお金を用意するが、気候変動のためには用意できないという立場は、非常に疑わしいのです。私たち市民社会の多くの人々は、この事態を全く理解することができません。 さらに、懸念される傾向として、(パナマ会議で起きている事は)法外な事に、途上国の削減義務の増大が、先進国の削減義務に関する進展なしで起きている事です。少なくとも、(2007年の)バリ会議での公約や(2010年の)カンクン会議での決定は、緩和と適応に関する途上国への支援、協力について行われました。しかし、結局この財政支援や技術移転も、全く進展していない状態です。 例えば、グリーン気候資金 (GCF) という命名で設立された資金ですら、全く中身のないカラの制度となっています。私たちは、 EU から GCF に関してその内容が GCF 自身によって決定されるという発言を聞きましたが、 GCF の交渉では、(その資金の)規模や、長期にわたる(明確な)財源に関する話は全く許されていません。 市民社会の憤慨 (先進国による途上国への)数多くの約束はいったいどこに行ってしまったのでしょう。今朝、アフリカ•グループ議長によってファースト•スタート•ファイナンス(短期資金調達)に関するこのような発言がありました。ファースト•スタート•ファイナンスは、コペンハーゲンにおいて(途上国の前に)ぶら下げられた‘ご褒美’のようなものであり、多くの国々がこれに騙されました。またカンクンにおいても現れ、またもや多くの国々が裏切られたのです。今日私たちが認めざるを得ないのは、このファースト•スタート•ファイナンスが決して早く(ファースト)もなければ、始まって(スタート)もいないという事実です。これでは、傷口に塩を盛るようなものではないでしょうか。 現在の事態はまさに、シェイクスピアの悲劇であり、数多くの裏切りが続けられながらもブルータスがヒーローとして君臨し、残された私たちへの負担が増え続けるのです。私たち市民社会は、このような事態に非常に憤慨しています。もし、このような傾向のもとにダーバンへ向かうのであれば、私たちの見通しは全く暗いものです。先進国が自ら何も貢献せずに、途上国に削減を迫るのであれば、ダーバンにおいて何も達成されないでしょう。これは、地球とその貧しい人々にとってまさに悲劇です。 ミーナ ラマン(FoE インターナショナル、 FoE マレーシア、サード ワールド ネットワーク)   関連リンク >FoE インターナショナル プレス•コンフェレンス (ラマン氏の発言は、09:40から) >国際社会の取り組み 気候資金 http://www.foejapan.org/climate/cop/panama201110_2.htmlサード•ワールド•ネットワーク パナマ ニュース アップデート