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温室効果ガス観測衛星「いぶき」 中国、インド等の都市でのメタン高濃度発生を観測。家畜のゲップや天然ガス採掘などが要因(RIEF)

2015-11-30 00:27:42

methanキャプチャ

 環境省と国立環境研究所は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSATゴーサット)による観測の結果、中国、インドの人口密度の高い都市部から人為起源のメタン濃度が目立って高い結果が得られた、と発表した。

 

 メタンの温室効果は二酸化炭素(CO2)の25倍あり、人間が大気中に排出する温室効果ガスのうち、CO2に次ぐ影響があるとされる。

 

 メタンの発生源は、天然ガス生産に伴う漏洩分や、牛や羊などの反芻動物のゲップ、稲作、ごみ埋め立てなどからの排出が全体の6割。残りは湿地などの自然起源とされる。メタンの大気中濃度は産業革命以来、2.5倍に増えているという。

 

 「いぶき」が2009年6月から2012年12月までの間の観測データを分析した結果、人口密集地域、大規模な農業地域、天然ガス・石油の生産・精製地域等で人為起源メタン発生が多く、周辺よりも明らかにメタン濃度が高いことがわかった。

 

 たとえば、中国の成都や重慶のメタン濃度は、最大で81ppb(1ppbは10億分の1)、パキスタンのラホール同58.1ppb、インドのカルカッタやバングラデシュで同54ppbを記録した。これらの地域では、農業や工業業が盛んで、かつ地形が周辺の山脈に遮られて、風が流れが妨げられやすくなっている。

 

 一方、米国ニューヨークやピッツバーグは22ppb、ロサンゼルスの34ppbだった。ともに人口密度が高く、工業地帯や農業などの影響があるとみられている。広大な牧草地や農場が展開するブラジルのカンポ地帯では42.6ppbだった。

 

  「いぶき」で観測された人為起源メタン濃度と排出量データ(インベントリ)から推定された人為起源メタン濃度との間には強い正の相関関係があることが実証された。

 

 「いぶき」は環境省、国立環境研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した世界初の温室効果ガス観測専用の衛星。2009年1月に打ち上げられ、現在も観測を継続中。2017年度に後継機が打ち上げられる予定。

http://www.env.go.jp/press/files/jp/28607.pdf