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IEA、気候変動対策の緊急性を示唆(National Geographic)

2011-11-15 15:12:37

中国の石炭灰集積場で撮影された、燃え残った石炭の回収作業。発電所やビル、工場など世界中で建設されているインフラ設備の主たるエネルギー源は、石炭など化石燃料だ。
国際エネルギー機関(IEA)によると、気候変動の深刻な影響を免れるには、5年以内の劇的な政策転換が必要だという。IEAは11月9日、2011年版の『世界エネルギー展望(World Energy Outlook)』を発表し、世界平均気温の上昇を2度以内に抑えるための道筋を示した。「2度」は地球温暖化による打撃を避けるために多くの国が合意した数値目標である。

「主要先進国をはじめ加盟国に警告を発してきたが、達成は困難との悲観的な見方が強まっている」と、IEA事務次長を務める元アメリカ外交官のリチャード・ジョーンズ氏は話す。目標達成に向けて世界全体で許容される二酸化炭素(CO2)総排出量は、2050年までで約1兆トンしか残っていない。

 発電所やビル、工場など世界各国のインフラ設備は、化石燃料を主なエネルギー源としている。主要温室効果ガスであるCO2排出の多くは化石燃料の燃焼が原因だ。

 建設されたインフラは、老朽化するまで稼働し続ける。そのため、何十年間もCO2排出源が「ロックイン」(固定化)されるとIEAは指摘する。つまり、既存・計画中のインフラを合わせると、今後数十年間の排出許容枠の80%が既に埋まっているのである。

 従来のペースでインフラ建設や化石燃料消費が進めば、5年後には排出許容枠の残りすべてがロックインされ、2017年以降はCO2排出量がゼロでない限りインフラを新設できなくなる。

「持続可能エネルギーの未来を描く妥当な道筋はまだ残されている。しかし、そのために必要な措置は年々困難になり、コストが著しく高くなってきている」と、IEA事務局長のマリア・ファン・デル・フーフェン氏は指摘する。

◆経済の誤った選択

「IEAが出した結論は大変厳しいメッセージだ。2017年までに低炭素型インフラへの大規模な政策転換が欠かせない」とIEA事務次長のジョーンズ氏は説明する。「なぜなら、転換を先送りすればするほど、老朽化していなくても規模の縮小や操業停止を余儀なくされる場合が増えるからだ」。

 まだ使用できるインフラの早期停止は、気候変動回避のコストが大幅に高くなることを意味する。IEAのレポートでも「先送りすれば結局はコストが増える」と忠告している。「いま低炭素型インフラに対する投資を1ドル惜しめば、4ドルのツケとなって将来のしかかってくる」。

 目標達成には、今後新しく導入するエネルギー源の半分以上を、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに変換する必要があるとIEAは予測する。再生可能エネルギーの迅速な普及には、巨額の補助金投入が必須となり、2035年までに年間投資額は現在の約4倍、2500億ドル(約19兆円)に達する見込みだ。それでも、化石燃料に対する現在の補助金の半分にも満たないという。

 目標達成には原子力発電を増やす必要もあるが、福島第一原発の事故以来、欧州では脱原発の動きが広まっている。一方、ロシアや中国、インドなどへの影響は少なく、大規模な増設が計画中だ。

 また、石炭の代わりに天然ガスの利用を増やすことも求められている。水圧破砕法(フラッキング)など新技術の登場で採掘量が劇的に増えており、IEAは実現可能だと考えている。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111111001&expand#title

中国の石炭灰集積場で撮影された、燃え残った石炭の回収作業。発電所やビル、工場など世界中で建設されているインフラ設備の主たるエネルギー源は、石炭など化石燃料だ。