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家庭の太陽光発電の「CO2削減価値」を、ブロックチェーン技術を使って瞬時取引システム開発へ。環境省、2018年度に導入を検討(各紙)

2018-02-09 12:04:24

blockchainキャプチャ

 

 各紙の報道によると、環境省は、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って二酸化炭素(CO2)削減価値を瞬時に取引できるシステムの設計を始める。家庭が太陽光パネルの利用による削減価値を売りに出し、企業が簡単に購入できる取引市場の創出を目指すという。18年度予算案に盛り込んだ。

 

 家庭での太陽光発電を対象とした固定価格での買取制度は、2019年11月に終了することで、以後の家庭発電の扱いが課題となっている。今回の同省の考えは、家庭での太陽光発電を継続するために、発電電力とは別に、発電に伴う「CO2削減価値」をまとめて売却できる仕組みを整備しようというもの。

 

 「CO2削減価値」の購入側は、パリ協定に基づいてCO2削減を求められる大企業などとなる。現在、わが国には国によるCO2削減義務付け制度は導入されていないが、投資家の圧力などを受けて、主要企業などを中心に、エネルギー・電力面での低炭素化、脱炭素化を志向するところが増えている・

 

 ただ、自社で再エネ発電をするのは容易ではなく、外部からクレジット等の調達でカバーするケースが増えている。

 

CO2キャプチャ

 

 環境省はこうした「CO2削減価値」への需給両面での市場の変化に対応するため、家庭の太陽光発電が生み出す「CO2削減価値」を市場で売却しやすくするシステム開発を進める。家庭の「削減価値」は小口であることから、これらを束ねて、買い手の企業側の需要量に応じて販売するためにブロックチェーン技術を活用する。

 

 ブロックチェーン技術は、「ブロック」と呼ばれるデータの単位を一定時間ごとに生成し、鎖(チェーン)のように連結してデータを保管するデータベース技術をいう。各家庭で生成したCO2削減価値の情報を、同技術で連携させることで、まとめて売却できる。

 

 各家庭では屋根の太陽光パネルで発電した電気を自ら使うほか、売電する分も含めて、CO2削減価値を常時算定できる。電力を購入希望の企業も自社の必要量に応じてCO2削減クレジットを市場価格で、大量購入することが容易になると期待される。

 

 現在、CO2削減価値は、太陽光発電や風力発電事業から算出される「グリーン電力証書」を民間市場から購入するか、あるいは国が認定している森林整備や中小企業の省エネ努力などをクレジット化したJ-クレジットなどがある。ところが、パリ協定の発効後、低炭素化を求められる企業の購入が増大し、クレジット不足の状況にある。

 

 また家庭の太陽光発電側も、固定価格買取制度の買い取り価格が継続的に低下していることから、売電とは別に発電によるCO2削減価値を売却できることは、普及の魅力になる。

 

 ただ、わが国の市場価値の算定には、クレジットそのものを排出権取引等で価格付けする制度が導入されていない点が最大の課題でもある。

 

 ブロックチェーン技術は情報を的確、迅速に把握できるが、クレジット価値自体を決める技術ではない。クレジットの市場価格を常時、適切に提供されるクレジット取引市場の整備が欠かせない。

 

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00461227?isReadConfirmed=true