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欧州連合(EU)の排出権価格(EUA)、7年ぶりに㌧当たり15ユーロ台を回復。温暖化対策の広がりと、エネルギー価格の回復を反映。温暖化対策の費用対効果を高める(RIEF)

2018-05-18 20:32:54

EUA1キャプチャ

 

 低迷を続けていた欧州連合(EU)の温暖化ガス排出権取引(C&T)価格が、今週になって、約7年ぶりで1㌧当たり15ユーロ(約1950円)に乗せた。排出権クレジットの入札が限定されたことが直接の要因だが、継続的な燃料価格の上昇と、パリ協定の順守に向けた規制の強化が始まり出した、との見方が有力になっている。

 

 EU-ETSのカーボンクレジット価格(EUA)は、2008年のリーマンショック後の欧州経済危機の影響で、価格の低迷が続き、2011 年第2四半期には10 ユーロ/t-CO2 を下回った。その後も、一時、5ユーロを下回った後、5~7ユーロで低迷する期間が続いた。この間に、欧州委員会は対象企業に配分する排出権の入札量を見直したり、制度改革を実施して需給調節を続けてきた。

 

 EUAの市況回復が顕著になってきたのは、パリ協定の実行に伴い、EU域内ではCO2排出量の多い石炭火力発電からの事業、投資両面での撤退が広がっているほか、途上国市場においても各国での温暖化規制が始まりだしたことで、それらの市場を対象とする欧州企業の排出権への需要も次第に増えてきたという背景がある。

 

 さらに国際的なエネルギー市場で石油価格の回復があり、それに伴い、クレジットの価格も上昇しているという市況の変化も重なっているようだ。EUAの価格は先週末が㌧当たり14.60ユーロだったが、今週初めには15ユーロに乗せた。

 

 排出権専門市場によると、直接的なEUAの価格上昇は、企業にEUAを配分するための入札の機会が、通常は週5回あるが、先週は2回しかなく、配分額も7.8M㌧と、通常の週の3分の1程度と少なかったことから、需給がタイトになったとみられる。

 

 このため、入札頻度が回復すると再び需給は緩和される可能性がある。ただ、域内市場では電力等のエネルギー価格の低迷が続いており、今後、価格上昇に向かうとの見方が出ている。エネルギー価格が上昇すると、カーボン価格も上昇するためだ。EUA市況の先行きについても引き続き上昇するとの観測が広がっている。

 

 EUA価格の上昇は、企業の温暖化対策の費用対効果を高めることから、低炭素社会への移行に取り組む企業を後押しすることになる。

Figure 1: Short term EUA Price Movement. Source: Redshaw Carbon Trading Update