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欧州委員会 英独仏など6か国の大気汚染改善の不十分さを欧州司法裁判所に提訴。気候変動対策に熱心なEUの"汚点”と担当欧州委員が批判(RIEF)

2018-05-19 14:00:53

EUキャプチャ

 

   欧州委員会(European Commission)は17日、英、独、仏などEUの6加盟国を、大気汚染の改善が不十分だとして、欧州司法裁判所への提訴を決めたことを明らかにした。いずれもEUが定める窒素酸化物などの大気汚染の環境基準の達成ができていないことが理由。今年の1月に9カ国に改善要請をしたが、英独仏などは十分な結果を出せない「問題国」として、司法判断に委ねられる事態になった。

 

 欧州委員会の環境・海洋・漁業担当の欧州委員、カルメヌ・ベッラ(Karmenu Vella)氏によると、裁判所への提訴の対象は、窒素酸化物の環境基準の未達状態が続いている英独仏のEU主要3カ国と、PM(粒子状物資)の基準を達成できず、提訴対象となったイタリア、ハンガリー、ルーマニアの3カ国。

 

 委員会は今年1月、これらの6か国を含む大気汚染環境の改善が遅れている9カ国に対して、早急な改善策の実施を求める勧告を出していた。このうち、スペイン、チェコ、スロバキアの3カ国は改善策を実施したことから、訴訟対象外となった。

 

 司法判断が出ると、6か国には高額な罰金が科される可能性があるという。さらに欧州委員会は、ディーゼル車の不正データ事件を起こしたドイツのフォルクスワーゲンなどの欧州自動車メーカーに対して、罰金を科すよう、英、独、ルクセンブルクの各国に要求を続けている。

 

 イタリアに対しても、フィアット・クライスラーの排ガス規制への対応が不十分だとして、提訴する準備を進めている。英、独、ルクセンブルク、イタリアの各国に対しては、すでに法的措置を講じることを通告する公的な通知を送付しているという。

 

 欧州委員会は大気汚染基準を満たしていない加盟国に対して、都市計画や建築デザインを改善して組織的な汚染防止体制を構築するほか、運輸、エネルギー、農業の各セクターにおいて、大気汚染物質の排出を制限するインセンティブ政策を導入し、汚染状況の改善を求めてきた。

 

 ベッラ委員は「欧州は多くの環境分野でグローバル・リーダーの役割を果たしている。だが、大気汚染の環境基準の達成状況は、EUのいくつかの国において、世界保健機関(WHO)による勧告基準よりも悪いのが実態だ」と指摘している。

 

 欧州委員会は1月末に、大気汚染状況の改善が進まない9ヵ国の大気品質担当の大臣会議を開催。大気汚染対策を積極的に講じることと、各国間での協力関係の促進を求めていた。大気汚染改善の具体策としては、自動車の排ガス規制の強化、低CO2排出車へのシフト、道路有料化の強化などを勧告している。

 

 EU加盟国の市民への調査では、10人中8人が、生活環境を守るために、法的規制の強化を求める声が強いという。このため、欧州委員会では、2016年にEU域内での環境対策の実施状況をフォローし、EU法の適用改善を進める政策ネットワークとして、「Environmental Implementation Review (EIR)」を設立。同ネットワークを通じて、委員会が各国の状況を個別にチェックすると同時に、加盟国同士の政策協力等を推進している。

 

 今回の提訴対象外となった3カ国は、このEIRのシステムを通じて、効果的な政策導入を積極的に行ったことが功を奏した形という。例えばチェコでは、道路通行時の排出量削減政策を導入、スロバキアは家庭での暖房設備についての改善のための多国間ワークショップを開催するなどの取り組みを展開しているという。

 

https://ec.europa.eu/commission/commissioners/2014-2019/vella/announcements/press-conference-informal-environment-council-sofia_en

https://www.politico.eu/article/commission-refers-six-countries-to-ecj-over-foul-air/