HOME8.温暖化・気候変動 |排出権取引やカーボン税で価格付けされたカーボン総量、今年は世界全体で前年比56%増と急増、820億㌦に。温暖化対策の需要増加を反映。価格自体は依然低い水準(RIEF) |

排出権取引やカーボン税で価格付けされたカーボン総量、今年は世界全体で前年比56%増と急増、820億㌦に。温暖化対策の需要増加を反映。価格自体は依然低い水準(RIEF)

2018-05-22 23:41:07

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 CO2排出削減のために世界各国で実施されているカーボン排出権取引制度(C&T)とカーボン税によって削減される2018年のカーボン総量が、前年比56%増の820億㌦に急増するとの見通しが世界銀行によって示された。

 

 世銀の年次推計「 State and Trends of Carbon Pricing 2018」は、現在、EUや中国、米カリフォルニア州などで導入されているC&T制度(25件)と、カーボン税(26件)の効果を推計した。これらのカーボン価格付け政策によって削減されるCO2総量は11G㌧。世界の年間CO2排出量の約20%をカバーする。2017年の8G㌧、15%から3割以上増大した。

 

 カーボン価格付けによって、制度を運営している政府・地方自治体は2017年、排出権の販売や税収で、年間330億㌦の収入を得た。16年の220億㌦の収入の5割増となった。これらのカーボン市場の増大は、パリ協定の発効後、各国で排出権対策が強化され、需給面でもタイトになっていることを反映している。日本は東京都と埼玉県が実施している地域版のC&T制度がカウントされている。

 

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 EU-ETS(EU排出権取引制度)のクレジットであるEUA価格は、17年中に1㌧当たり5ユーロ(約7㌦)から13ユーロ(同16㌦)前後に上昇したほか、カーボン税でもフランスやスイスの税率が引き上げられるなどの動きが広がった。

 

 ただ、パリ協定が目標とする世界の気温上昇を産業革命前からの2℃より低い水準に抑制するレベルを達成するには、カーボン価格は1㌧当たり40~80㌦台に引き上げることが必要と推計されているが、現状の価格は、㌧当たり1㌦から139㌦と大きく分散しており、制度の半分は10㌦以下にとどまっている。報告書は、カーボン価格効果はまだ十分には発揮されていない、と指摘している。

 

 C&T制度は、昨年末、中国が全国版のETSの発足を決めたが、まだ本格的なクレジットの取り引きには至っていない。ただ、現在、制度導入を検討中、あるいは計画中とするところが88カ国になっており、新興国を中心に、カーボン価格付け政策が広がりそうだ。

 

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http://www.worldbank.org/en/news/press-release/2018/05/22/more-governments-taking-up-carbon-pricing-and-seeing-big-benefits-in-revenues-world-bank-report