温暖化による地球の気温上昇、2040年にはパリ協定の努力目標1.5℃上昇に。国連IPCCの10月の報告書案が判明。熱波、洪水、集中豪雨等の被害増大へ（各紙）
2018-07-24 06:54:00
世界的に気温上昇が続く中、国連の気候変動に関する政府間パネル（IPCC）は、現状の温暖化ガスの排出ペースが続くと、パリ協定が世界の気温上昇の1.5℃以内に抑えるとした努力目標を、2040年ごろには達成してしまうとの予測をまとめた。10月に韓国で開く会合で報告する。世界経済の成長が続くことから、IPCCの当初予想を上回るペースで気温上昇が続くことになる。
（写真は、IPCCのスイス・ジュネーブ本部）
ロイターなどが報じた。パリ協定の目標は、世界の気温上昇を産業革命前から2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力目標を設定している。しかし、IPCCの推計では、すでに2017年時点で気温上昇は1℃に達しており、現状の温暖化ガスの排出がこのままのペースで続くと、今後10年当たりで0.2℃ペースで上昇が進み、2040年ごろには1.5℃に達するという。
産業革命時の1880年から2012年までの温度上昇は0.85℃で、10年当たりでは約0.06℃だったが、今後の10年間は、この上昇ペースが3倍に増加すると推計されている。単に、協定の努力目標が近づくだけではない。その達成テンポが当初の予想よりも早いことは、気候変動がその分、急激に進行することを意味する。
すでに、世界的に、猛暑や熱波、豪雨が増加しているほか、世界の海面上昇も、1993年から2015年までの間に平均7cm上昇したことが確認されている。海面上昇はこのトレンドが続くと今世紀末には、約30cm上昇するという。http://rief-jp.org/ct4/63515
IPCCは今年1月に、ドラフト案を世界中の気候問題研究者に回覧した。同案に対して、日本を含む世界中の研究者らから約2万5000ものコメントが寄せられ、気温上昇のピッチが速まっていることが多くの研究者の実証研究やモデル分析等で確認された。
IPCCの幹部は、この急速な上昇ピッチを止めるには、各国政府が「迅速かつ広範囲にわたって」世界経済の低炭素経済社会への移行で合意する必要がある、とし、そうした合意はまだ実現可能、としている。また報告案は、合意の実現には50年ごろにおいて、産業活動などによる温暖化ガスの排出量と、植物などの吸収量（削減量）を差し引きゼロとする「実質ゼロ」が必要、としている。
ただ、トランプ政権が誕生し、昨年、米国がパリ協定からの離脱を決めたことから、パリ協定順守の雲行きが微妙になっているのも間違いない。政治的な牽引力が低下する一方で、引き続きアジア諸国を中心とした経済成長が続き、エネルギー需要が上昇し続けていることも、気温上昇の大きな要因になっている。
気温が現状よりも1.5％上昇した場合、熱波などによる熱中症の死者が増えるほか、海面上昇は今後さらに10cm上昇する。沿岸地域で生活する世界約1000万人弱の人々が、洪水、暴風雨の増大、飛散する海水の拡散による穀物類への打撃などの被害が拡大するとみられる。
今回の報告書案を土台に、10月に公表されるIPCC最終報告書を受けて、12月にはポーランドで第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議（COP24）が開かれる。そこでは気温上昇を抑えるための具体的な政策対話が進むかどうかだ。
米国が11月の中間選挙で温暖化対策重視派の民主党が議席を伸ばせるか、あるいは中国がリーダーシップを意識するか、欧州の巻き返しがなるか。日本政府にも期待したいところだが、5 月に見直した「第5次エネルギー基本計画（案）」でも、従来からの原発・石炭火力重点の政策には変更はなかった。
また再生可能エネルギーの導入目標も 22～24％で現行と変わらない。「迅速かつ、広範囲にわたって」低炭素経済社会への切り替えがグローバルに求められる中では、日本に対して「期待」の目を向ける諸外国はほとんどない、といっても過言ではないのが現状だ。
Research Institute for Environmental Finance