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ブラジル大統領選の有力候補者のボルソナロ氏、トランプ政権に倣って「パリ協定からの離脱」を宣言。10月の選挙に国際的な関心が集まる(RIEF)

2018-08-21 11:27:59

Brazil1キャプチャ

 

 またやっかいな政治家が登場してきた。10月に予定されるブラジルの大統領選挙に立候補している 右派のPSL(社会自由党)下院議員のジャイール・ボルソナーロ氏だ。当選したら、米トランプ政権を倣って、パリ協定から離脱すると宣言したためだ。大統領選挙での支持率では現在、元大統領のルーラ・シルバ氏が一番人気だが、汚職容疑で収監されているため、二番人気のボルソナーロ氏の当選の可能性も無視できない状況という。

 

 ボルソナロ氏は軍人出身で、過激な発言からこれまでも「ブラジルのトランプ」との別称も得ていた。6月の世論調査ではルラ氏を上回って一時、一番人気だった。

 

 ブラジルの大統領選は10月7日に投票が行われる。得票率首位の候補が過半数を獲得できなかった場合は10月28日に決選投票が行われる。ボルソナロ氏は先月、キャンペーン開始を宣言、その際に、当選したら、米国のトランプ大統領と同様に、パリ協定から離脱することを明言した。

 

 ボルソナロ氏は、離脱意志の詳細な説明はしていない。だが昨年夏、温暖化懐疑論者で地質学者のRicardo Felicio氏とのインタビューを行っているほか、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を明言した2日後に、「温暖化のウソ」というタイトルの記事をSNS上でシェアしていたという。トランプ大統領の決断に刺激を受けた可能性がある。

 

bolsonaroキャプチャ

 

 ボルソナロ氏には3人の息子がおり、いずれも政治家で、父親よりも明確に温暖化問題への懐疑論を展開している。サンパウロ州選出の連邦議員であるエドアルド氏は、1月に、パリ協定を「国際的な陰謀」とみなすビデオを作成しているという。エドアルド氏は、トランプ政権の元アドバイザーを務めたスティーブ・バノン氏と最近、ニューヨークで会っていたことも報道されている。

 

 リオデジャネイロ市議会議員であるカルロス氏は、2016年にツィッターで気候変動について「左派のアジェンダ」と批判するコメントを発信した過去がある。また、「すべての証拠は、世界は(温暖化ではなく)冷却に向かっている」と反論している。もう一人の息子のリオデジャネイロ選出の連邦議員のフラビオ氏も、「温暖化はウソだ」と明言している。

 

 こうした状況から、仮にボルソナロ氏が大統領に選出されると、トランプ追随で大衆迎合政策を展開するのではとの懸念が環境派から上がっている。ただ、ブラジルのパリ協定加盟は大統領の一存で決まったわけではなく、議会の承認を得ており、大統領が離脱を宣言しても議会との調整が必要になる。議会ではボルソナロ氏が率いるPSLの基盤は弱い。

 

 またブラジル政府の最新の発表によると、同国がパリ協定で約束した2020年の国別削減公約(NDC)は3年前倒しで達成可能となっており、協定から離脱する政治的・経済的な理由は見当たらない状況でもある。政府の環境省の幹部も、「われわれは協定での約束を効果的に実行できるし、そうしなければならない」と説明している。

 

 その一方で、世界最大のアマゾンの熱帯雨林を持つブラジルでパリ協定離脱の議論が本格化することは、温暖化対策の促進に影響を与えるとの懸念もある。アマゾンの熱帯雨林は2016、17年と続けて、今世紀最大の森林伐採が進行している。伐採阻止に向けた国際的なプラッシャーが高まる一方で、森林と伐採後の土地を資源として活用する動きも高まっている。

 

 ボルソナロ氏の「トランプ氏に追随」宣言が、国際的な温暖化対策の進展に逆風となる可能性もある。

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Jair_Bolsonaro