HOME8.温暖化・気候変動 |米環境保護庁、石炭火力の排出規制を各州の権限に移管、と正式に提案。石炭産業の多い州に配慮。CO2排出削減量は急減。オバマ前政権のCPPに代わる「ACEルール」というが(RIEF) |

米環境保護庁、石炭火力の排出規制を各州の権限に移管、と正式に提案。石炭産業の多い州に配慮。CO2排出削減量は急減。オバマ前政権のCPPに代わる「ACEルール」というが(RIEF)

2018-08-22 22:07:30

EPAキャプチャ

 

 米環境保護庁(EPA)は21日、石炭火力発電などからの二酸化炭素(CO2)排出規制の緩和案を正式に発表した。これまでのように、連邦政府が規制を推進するのではなく、州当局に権限を委ねるもので、石炭や石油を生産する州では規制の緩和・撤廃が自由にできるようになる。新政策により、石炭火力発電からのCO2排出量は2030年には1.5%削減と、オバマ政権が目指した32%削減より大幅に緩められる。

 

 トランプ政権の石炭火力発電政策の変更はすでに本サイトで報じている。http://rief-jp.org/ct4/81940 新規制は「Affordable Clean Energy (ACE) Rule」と呼ばれる。EPAではパブリックコメントを求めた後、2019年初めにも導入する方針だ。

 

 スキャンダルでEPA長官の座を辞したプルイット氏の後任として7月にトランプ大統領から指名され、現在、長官代行の Andrew Wheeler氏は「トップダウン、全国一律規制の時代は終わった」と規制権限を州に委ねる政策を自画自賛した。

 

EPA長官「代行」のWheeler氏
EPA長官「代行」のWheeler氏

 

  新基準はオバマ前政権が策定した「クリーン・パワー・プラン(CPP)」に代わるCO2排出規制の枠組みになる。オバマ前政権は石炭火力発電所のCO2排出量を2030年までに05年比で32%削減する目標を掲げ、州法での規制導入を目指していた。今回のトランプ政権の政策は、州の機能を重視する点で、オバマ前政権の方針を”借用”しながら、国全体の規制目標には言及せず、規制の強弱、撤廃まで各州の裁量に委ねる形とする。

 

 石炭火力は大量のCO2排出源であるだけでなく、ばいじんや有害物質等も大量に排出する。EPAのこれまでの調査では、現状のままでは2030年には米国だけで1400人が追加的に健康を害して死亡すると推計しているほか、ゼンソクの悪化も4万件、学校の休校日も増大するとみられている。オバマ前政権のCPPは、2030年までに年間4500件の呼吸器疾患での早死を防ぐとしていた。

 

 こうしたことから、石炭火力発電を含めて温暖化規制を強化している州などからは、新たなEPAの規制転換は、政策の不一致であり、米国民の健康保護に逆行する、との批判があがっている。規制撤回の提訴が起きる可能性も出ている。今回の石炭火力擁護の方針は、中間選挙をにらんで、石炭関連産業の多い州の票田確保を狙った政治的なアピールの側面もある。

 

 EPAの実質責任者のWheeler氏は、ブッシュ政権の際にもEPAで働いたことがある。石炭業界のロビーイストとして知られ、長官代行のポジションで石炭業界の思惑に沿う政策を打ち出し、地球温暖化対策に後ろ向きなトランプ政権のEPAを率いる「実力ぶり」を早々と示した形でもある。

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-proposes-affordable-clean-energy-ace-rule

 https://www.epa.gov/