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太平洋の島国サモア首相、反温暖化主張の政治家を「彼らは精神病院行き」と激しく批判。気候変動は「人類の存在の危機」。トランプ氏だけでなく、オーストラリアの新首相も念頭か(RIEF)

2018-09-01 17:29:36

samoa1キャプチャ

 

   太平洋の島国サモアの首相、トゥイラエパ・サイレレ・マリエレガオイ(Tuilaepa Lupesoliai Sailele Malielegaoi)氏は、訪問先のオーストラリアのシドニーで演説、気候変動は「(人類の)存在自体の危機。これを否定する政治リーダーは精神病院に収容されるべきだ」と、強い口調で各国の反温暖化論者を批判した。

 

 サイレレ首相は、ナウルで3日から開く太平洋諸島フォーラム(PIF)に先立ってオーストラリアを訪問した。気候変動について「すべての太平洋諸国で生活する家族にとっての脅威」と強調。米国、インド、中国のCO2排出量の大きな3カ国を名指しし「これらの3カ国は(気候変動によって惹起される)すべての自然災害に責任を負っている」と指摘した。

 

 パリ協定では、世界の気温上昇を産業革命前から2℃上昇に抑える国際目標で合意した。だが、トランプ米政権が協定からの離脱を宣言、さらにオーストラリアで新たに就任した スコット・モリソン首相も石炭産業擁護論者として知られる。また中国も、石炭火力発電の削減を国際公約してきたが、最近は国内での新規建設を認め始めている情報が流れるなど、「反温暖化」の巻き返しの動きが無視できない状況になっている。

 

PIFを主催するナウルのBaron Divavesi Waqa大統領
PIFを主催するナウルのBaron Divavesi Waqa大統領

 

 サイレレ首相が3大CO2排出国の責任を強調する一方で、「気候変動の脅威がないと主張する政治リーダーは精神病院送り」と激しく批判した先には、オーストラリアも念頭に置いていることを隠さなかった。同氏は「(オーストラリアを含む)太平洋諸国の人々の生活、安全保障、福利厚生にとって、唯一最大の脅威は気候変動の影響だ」と指摘、その脅威を軽減するうえでのオーストラリア政府のコミットメントを求めた。

 

 しかし、退任を余儀なくされたマルコム・ターンブル前首相は、PIFにも自ら参加する姿勢だった。だが、モリソン首相は出席せず、代わりに外相を送る形で太平洋諸島諸国の批判の矢面に立つのを避ける選択をした。サイレレ氏の「精神病院送り」の対象には、モリソン氏も入っているようだ。

 

太平洋諸島で進む海面上昇(ツバル)
     太平洋諸島で進む海面上昇(ツバル)

 

 サイレレ氏の過激な発言はたぶんに、PIF開催前のアピールの意図があったかもしれない。ただ、気候変動の激化による台風等の被害が毎年増大し、海面上昇も続く太平洋島嶼部諸国にとって、「気候変動の影響はゆっくり始まってきた、と考える人がいるかもしれないが、われわれの地域ではすべての人々が、すでにその有害な影響を実感している」(サイレレ氏)という面を無視できない。

 

 この夏、日本を含め欧米では気温上昇が相次ぐ酷暑となったが、太平洋諸島では気温上昇は当然で、加えて、災害の多発と被害の増大が毎年拡大している。日本の西日本での集中豪雨や台風の強大化も、気候変動によって従来の自然災害のレベルを超えている可能性が高いが、日本政府は温暖化対策に対して、効果的な対策を講じていない。ここでも、「ゆでガエル」状態なのかもしれない。

 

 サイレレ氏は、気候変動を過小評価するグローバルリーダーたちを非難する一方で、「問題解決で求められるのは政治的なガッツ(やる気)だ」と述べた。「われわれはみんな問題を知っている。その原因も知っている。さらに解決方法だって知っている。政治的な勇気が発揮されていないだけなのだ。政治的なガッツによって、それぞれの国民に真実を伝えることができるはずだ。災害の原因は気候変動なのだと」と指摘している。

 

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