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水田由来の温室効果ガス、石炭火力発電所約200基の年間排出量に相当。従来の推定量の2倍の可能性も。米環境保護団体EDF等が研究論文で指摘(AFP)

2018-09-11 16:29:11

komeキャプチャ

 

【9月11日 AFP】世界の稲作水田の一部は、水を張る期間とその後に土壌を乾燥させる期間のサイクルを繰り返す方法で管理されているが、これが原因で地球温暖化を招く温室効果ガス汚染が従来の推定量の2倍に及んでいる可能性があるとする研究論文が10日、発表された。

 

 査読学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によると、コメは世界人口70億人の半数以上が主食としているため、水稲をどのように管理するかが地球の気候温暖化に重大な影響を与えるという。

 

 環境保護団体「環境防衛基金(EDF)」のチームは今回の研究で、亜酸化窒素(N2O、笑気ガス)の放出量を詳細に調査した。大気中の残留時間(寿命)が長いN2Oは、メタンや二酸化炭素(CO2)よりも強力な大気汚染物質とされる。

 

 N2Oの放出量は、水田を乾燥させた後で再び水を張る場合に増加する。「間断かんがい」と呼ばれるこの方法では年に数回、水田の水位を下げて地面を露出させる。

 

 正確な数は不明だが、一部の農家は間断かんがいで稲作をしている。水田から放出されるもう一つの主要温室効果ガスであるメタンが削減されるからだ。

 

 論文の筆頭執筆者で、EDFの上級研究員クライティ・クライティ(Kritee Kritee)氏は、AFPの取材に電子メールで回答。「土壌が頻繁に湿ったり乾いたりすると、N2Oを生成する微生物にとって理想的な環境が土壌内に何度も繰り返し形成される」「一方、メタンを生成する微生物にとっては、土壌が水中に沈んでいることが必須条件となる」と説明した。

 

 「世界のかんがい農場の大半は水田に連続的に水を張る連続かんがいを行っており、こうした農場では有意な量のN2Oは生成されない」と広く考えられているが、すべての農場で連続かんがいが行われているとは限らないため、「稲作農業による気候への全影響が著しく過小評価されている」と、クライティ氏は指摘した。

 

■石炭火力発電所200基から年間放出される気候汚染物質量に相当

 

 論文の執筆者らによると現在、評価対象外となっている稲作由来のN2Oの世界放出量は、石炭火力発電所約200基から1年間に放出される気候汚染物質の量に匹敵する可能性があるという。

 

 国内の間断かんがい水田5か所で今回の調査を実施したインドだけに限ると、N2O放出量は「連続かんがいの下で報告されているより30~45倍多い可能性がある」と、研究チームは指摘。全体としては、1ヘクタール当たりのN2O放出量は、間断かんがい農場に関する過去の研究で報告されていたより3倍多いと推算している。

 

「今回の最新データを全世界に当てはめて、メタン放出量の推定に組み込むと、メタンとN2Oの両方による気候に対する最終的な影響は過去の推定より2倍大きくなる可能性がある」と、クライティ氏は述べた。

 

 専門家らによると、かんがいによる稲作を行う農業従事者すべてが水田に浅く水を張る、つまり地面から5~7センチ以内の水位を保つことが改善策の一つとなると考えられるという。

 

「このかんがい管理体制で生成されるメタンとN2Oは最小量となる」と、クライティ氏は述べている。

 

 稲作由来のN2Oについては現在のところ、大規模な追跡調査は行われておらず、中国やインドなどのコメの主要生産国が国連に報告する温室効果ガスインベントリ(一覧表)からも外されている。

 

 だが、世界各地で水不足がますます深刻化するのに伴い、水田土壌の湿潤と乾燥を繰り返すサイクルが、地球にもたらす危険について周知されないまま、多くの稲作農業従事者らに解決策として注目される可能性がある。

 

 この事態を回避するには、科学者らが世界規模でのN2Oの追跡調査と報告をさらに拡充する必要があると、EDFは指摘している。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3189226