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グリーンランド氷床、想定より低い気温でも融解=研究論文(Reuters)

2012-03-12 18:13:16

海氷の間に浮く氷山(2010年3月18日、グリーンランド・ウマナック)
【ロンドン11日ロイター時事】11日に科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載された論文によると、グリーンランドの氷床は世界の気温上昇幅がこれまで考えられていた水準より低くても、完全に融解する可能性があるという。これにより、海面上昇の脅威が増し、問題がより深刻になる。陸氷の大量融解は、長期的に数メートルもの海面上昇をもたらし、何百万人もの人々の生命を危険にさらすからだ。

海氷の間に浮く氷山(2010年3月18日、グリーンランド・ウマナック)




 ドイツのポツダム気候影響研究所とスペインのマドリード・コンプルテンセ大学の科学者らは「われわれの研究では、氷床が融解する気温の『しきい水準』は存在しており、それは今まで過大評価、つまり高めに見積もられていたことが示唆されている」と述べた。研究チームは氷床の進化をコンピューターでシミュレーションし、将来の動きを予測した。

 チームによると、世界の気温が産業革命前の水準からセ氏0.8~3.2度上がると氷床が完全に融解する可能性があり、最良の推定値は1.6度という。これまでの研究では、セ氏1.9~5.1度の上昇で完全に融解するとされ、最良の推定値は3.1度だった。

 世界の陸氷の20分の1がグリーンランドにある。グリーンランドの面積は米国の4分の1ほどで、島の約80%が氷床に覆われている。これまでの研究では、これが全て融解すると世界の海面が6.4メートル上昇するとされていた。

 チームを率いるポツダム研究所のアンドレー・ガノポルスキー氏は、「世界の気温が『しきい水準』を大きく超えた状態が長く続くと、氷が解け続けて再生しないだろう。たとえ何千年後に気候が産業革命前の状態に戻ったとしてもだ」と述べた。

 今日、地球の平均気温は既に0.8度上昇している。論文の主執筆者であるアレクザンダー・ロビンソン氏は「『しきい水準』を超えれば超えるほど、溶解の速度は速まる」と指摘した。

 温室効果ガス抑制のために世界が何も行動を起こさなければ、地球の平均気温は8度上昇する恐れがある。これが現実になると、「今後500年以内に氷床の5分の1が失われ、2000年後には完全に失われる可能性がある」と同氏は警告した。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2012031200340