HOME8.温暖化・気候変動 |東京湾岸の千葉・袖ケ浦での大規模石炭火力発電所建設計画、環境NGOグリーンピースの住民アンケートでは、約8割の住民が「計画を知らない」と回答。情報普及の不徹底、浮き彫りに(RIEF) |

東京湾岸の千葉・袖ケ浦での大規模石炭火力発電所建設計画、環境NGOグリーンピースの住民アンケートでは、約8割の住民が「計画を知らない」と回答。情報普及の不徹底、浮き彫りに(RIEF)

2018-11-05 08:00:01

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  東京ガスと出光、九州電力の3社が、千葉県・袖ケ浦市の東京湾岸に建設計画中の大規模石炭火力発電所(1、2号機合わせて200万kW)について、環境NGOのグリーンピース・ジャパンが周辺住民への意識調査を実施した。その結果、大半の住民が地球温暖化や大気汚染に懸念を表明する一方で、温暖化加速の懸念がある新規石炭火力事業計画が地元で進められていることを、住民の8割以上が知らないと答えるなど、住民への情報周知が図られていないことが明らかになった。

 調査は今年9月21日~26日の間、同発電所の建設予定地の袖ヶ浦市のほか、周辺の木更津、市原、千葉の各市在住の1000人を対象に、インターネットで実施した。調査期間は2018年9月21日~26日。

 調査結果では、「最も関心の高い環境問題」への問いに対して、「地球温暖化」が55.9%と最も多かった。その理由として、気象災害の増加のほか、将来世代の社会環境への影響を心配する意見が80.9%と圧倒的だった。

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 温暖化への関心を示した回答者のほぼ半数(47.4%)は、「子どもや孫の世代の社会環境への影響」を懸念し、特に18歳以下の子や孫のいる回答者では60.1%が懸念を示した。この夏に全国で発生した気象災害や猛暑の体験から、温暖化を原因とする気候変動が確実に進行し、将来への不安を高めている傾向が表れた。

 ただ、温暖化を進行させる主要な要因であるCO2をもっとも多く排出するのが石炭火力発電所であることを知っているか、との問いには、「知っていた」の回答は48.8%で過半数を切り、「子どもがいる」と答えた人(288人)で「知っていた」の回答は38.9%に下がるなど、温暖化への懸念と石炭火力の影響の知識が十分につながっていないことが浮き彫りになった。

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   調査対象者の居住圏である袖ケ浦に大規模な石炭火力発電所建設の計画があることを知っている人は、全体の18.2%でしかなく、そのうち「子どものいる」人で「知っている人」は13.5%と、さらに認知度が下がった。

 計画を「知っていた」と答えた18.2%の人に対して、石炭火力発電計画の環境アセスメントで周辺住民の意見を聞くプロセスがあることを聞いたところ、「アセスメントが実施されていると知っているが、具体的なことは知らなかった」(48.9%)、「アセスメントを実施していること自体を知らなかった」(25.3%)の順で、「アセスメントを知っており、意見も提出した」の回答は、わずか7.7%にとどまった。

 新規の石炭火力計画への賛否の問いには、「強く反対」(16.9%)、「どちらかといえば反対」(22.9%)を合わせた49.8%が最も多く、「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計は10.9%だった。ただ、「情報が足りなくて答えられない」も37.8%とかなりの割合を占めた。アセスメントの周知不足とともに、行政による情報提供の不足で立ち往生している住民が少なくないことがわかった。
  

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 地域で望ましい電源については、太陽光(68.0%)が最も高く、以下、風力(51.6%)、水力(33.4%)、地熱(29.7%)、バイオマス(21.9%)、天然ガス(18.6%)の順。石炭は「その他」を除くと最下位の2.6%だった。

 温暖化に対す る政府の対策への評価では、「十分な対策が取れていると思う」との回答はわずか2.7%。「対策としては足りないが仕方がない」(25.4%)、「対策として足りないのでもっとやるべき」(58.7%)を合わせると、84.1%の人が「政府の対策の足りなさ」を感じている。

 「気候変動回避のため、政府や行政が省エネや持続可能な自然エネルギーをもっと積極的に推進すべきと思うか」との問いに対しては、「積極的に推進してほしい」(45.7%)と、「どちらかと言えば推進してほしい」(35.2%)を合わせると、大半の80.9%が現行のエネルギー政策を再エネ、省エネ推進型に切り替えることを求めている。

 対象となる石炭火力建設計画は、東ガスなど3社が出資して設立した「株式会社千葉袖ケ浦エナジー」が出光興産所有地内に、石炭を燃料(バイオマス混焼も検討)とする総出力約200万kW(100万kW×2基)の超々臨界圧方式(USC)火力発電所を新設する内容だ。完成は2020年代半ばとしている。

 2015年以降、東京湾岸では4か所(袖ケ浦、市原、千葉、横須賀)の石炭火力計画があり、うち市原の計画は方法書で環境大臣の反対意見等を受けて、昨年、計画中止となっている。