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2030年までに国内の全石炭火力発電所を段階的に廃止へ。環境NGOのKIKO(気候ネットワーク)が「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」を公表(RIEF)

2018-11-12 09:19:43

Coalキャプチャ

 

   環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は、パリ協定の目標を達成するため、日本の石炭火力発電所について、現在の新規建設計画と工事中の発電所を全て中止するとともに、既存の発電所117基も2030年までに段階的に全廃を求める「石炭火力2030フェーズアウトの道筋」を公表した。LNG発電、再エネ発電、節電の組み合わせで実現可能と説明している。

 

 KIKOのレポートは、2018年4月時点で把握できる日本の既存の石炭火力発電所117基について、運転開始年が古く、また発電効率の低い発電所から段階的に2030年に向けて全て廃止していくスケジュールを示している。

 

 既存石炭火力のうち、運転開始年から40年以上経過した発電所は22 基(420.5万kW)あり、 古いものは60 年近い。一方、運転開始から 20 年未満の比較的年数が浅い発電所58基ある。これらの年数の浅い発電所は、京都議定書の採択後の1998 年から第1約束期間が始まる前年の2007年までに駆け込み建設されたものとみられる。

KIKO2キャプチャ

 

 既存の石炭火力と新規計画の石炭火力を、廃止を見込まずに全て合計すると、 6020.9 万 kW になる。新規計画が全て建設・運転され、各発電所が 40 年で廃止するとの想定の場合、 2026 年の 5136.7 万 kW をピークに設備容量は減少していく。 しかし、その場合でも、2050 年には現行の新規計画発電所は建設から40年を経ておらず、 2000 万 kW 近くの発電所が残ることになる。

 

 KIKOは、パリ協定の2℃目標を達成するためには、2050 年にはエネルギー部門の完全な る脱炭素化が求められるほか、さらに1.5℃以内に気温上昇を抑制する場合は、更なる前倒しが必要であり、単に既存発電所の40年廃止だけでは、不十分と指摘している。

 

 KIKOが示す「石炭火力フェーズアウトの道筋」では、建設中 ・ 計画中の案件はすべて中止することを前提とし、 既存117基の石炭火力を2030 年までに全廃する。古く発電開始し、効率の悪いものから順次廃止する。最も効率の悪い亜臨界圧(Sub-C)は 2022年までに、 超臨界圧(SC)は 2025年までに、超々臨界圧(USC)は、 2030年までに全廃する。

 

KIKO3キャプチャ

 石炭火力の廃止は、毎年200万kWから、多い年でも約400 〜500万kWの電源を、段階的に廃止していくこととしている。事前に計画を立て、段階的に対策を取ることで、電力の安定供給を維持したうえで、石炭火力をよりクリーンな電源に切り替えていくことが可能と、説明している。

 

 政府は石炭火力を「ベーストード電源」と位置付けている。4000 万kWを超える石炭火力を今後10年余でゼロにすることは、電力の安定供給への影響を懸念する声も出る。そうした点に対しては、LNG 火力発電の増設を代替策としてあげている。

 

KIKO1キャプチャ

 

 2014 年以降、 新規建設または増強が進められている大型のLNG火力は日本全体で約900万 kW。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の供給計画によれば、現行のLNG事業者の供給計画は全体に設備過剰で、2027年のLNG火力の設備利用率は2017年の55.3%から43%にまで下がる見込み。このLNG火力の設備利用率を60〜65%に引き上げるとともに、再エネの発電量をOCCTOの見通し通りに27%にすれば、 石炭火力減少分の大部分はカバーできる、という。

 

 OCCTO の2018年~2027年の10年間の最大電力及び需要電力量の年平均増加率見通しは± 0%と横ばいの見込み。節電や省エネの進展状況、 ピークカット対策などの要因を加味した結果、2018年と同水準の需要と見込んでいる。今後、IoT(モノのインターネット)を節電や省エネに活用することで、年率1.5%の省エネを進めれば、 石炭火力廃止分は、 原 発の発電電力量をゼロにしたままでカバーできる、としている。

 

 KIKOはこうした「フェーズアウト計画」を土台に、パリ協定の目標と整合する水準まで、政府の温室効果ガス排出削減目標を引き上げることを求めている。こうした条件下でも、再エネと省エネの取り組みを加速度的に進めることで、脱炭素社会を早期に実現できる、と分析している。

 

 そのうえで、今回の分析においても、既存発電所の情報や設備ごとの設備利用率が公表されていなかったことを指摘。実態に即した検討や検証を進めるうえでも、政府及び各電力事業者がデータや情報開示を進めることを要請している。

 

 

https://www.kikonet.org/info/press-release/2018-11-09/coal-phase-out-2030