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ブラジル、来年の気候変動枠組条約会議(COP25)の主催撤回を表明。温暖化懐疑論者のボルソナーロ新大統領の意向を反映。アマゾン熱帯林の大規模開発を優先か(RIEF)

2018-11-28 21:41:15

Brajil2キャプチャ

 

 ブラジルは来年に予定されていた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の主催を返上すると発表した。先月、新大統領に選ばれたジャイール・ボルソナーロ氏の意向とみられる。同氏は温暖化対策に後ろ向きで知られる。ブラジルの方針は、ポーランド・カトヴィッツで来週から開催されるCOP24の会合に冷や水を浴びせる格好となった。

 

 現地の報道によると、ブラジルの外相が国連気候変動条約事務局長のPatrícia Espinosa氏に対して、COP25主催の撤回のメッセージを送付したという。撤回の理由は、来年はボルソナーロ氏が政権を掌握した後の移行過程に当たることと、財政上の制約をあげたという。

 

 極右政治家として知られるボルソナーロ氏は10月の選挙で勝利、年明けの1月に正式に政権を率いることになる。同氏は米国のトランプ大統領と同様、温暖化現象について懐疑的であることを広言してはばからない。世界最大の熱帯雨林であるアマゾン一帯についても農場開発を広げることを選挙公約で掲げるなど、開発優先の姿勢で知られる。

 

「アマゾンを大農業地帯に」と開発優先の姿勢のボルソナーロ大統領
「アマゾンを大農業地帯に」と開発優先の姿勢のボルソナーロ大統領

 

 しかし、世界最大のCO2吸収源であるアマゾンの熱帯雨林をこれ以上開発すると、温暖化の加速によって、地域の気候変動の変動が激しさを増し、生態系の破壊が進み、人々の生活にも大きな困難を引き起こす懸念がある。

 

 ボルソナーロ氏は、環境省を廃止し、農業政策を重視する農業環境省に切り替えることも宣言している。その大臣には農業生産を高めるため、農薬の使用制限の緩和を持論とするTereza Cristina Dias氏を据える。彼女は「Muse of Poison(毒薬の女神)」と称されるほど、熱心な農薬規制緩和論者だ。彼女を農業環境省の大臣に指名したことで、環境保護派は「ボルソナーロはアマゾンを農場にしようとしている」と悲鳴をあげている。

 

 外相には、ボルソナーロ氏よりももっと明確に温暖化を批判してきたErnesto Araújo 氏を指名している。同氏は気候変動について、「西欧社会を窒息させ、中国の成長を促す『文化的マルキシズム』による陰謀の一部だ」との説を唱え、気候科学についても「ドグマ(教義)だ」と批判してきた。

 

大統領よりも温暖化陰謀説を主張するErnesto Araujo新外相
温暖化陰謀説を主張するErnesto Araujo新外相(右)

 

 COP24は今週末の12月2日から14日まで、ポーランドのカトヴィッツで開く。パリ協定の目標達成のための実行ルールや各国の取り組み等を議論、検証する予定だ。開催に先駆けて国連環境計画(UNEP)は、協定が掲げる「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑える」の目標を達成するためには、各国が掲げるGHの削減量を約3倍にする必要があるとの報告書を公表するなど、温暖化対策の推進を後押しするムードを盛り上げようとしている。

 

 しかし、降って沸いたようなブラジルの「COP25返上宣言」は、各国にとって大きなショックとなった。代わりの主催国はどこかが手を上げるだろうが、米国に続いてブラジルが事実上、パリ協定から遠ざかることになると、国連の掛け声や報告書の連発だけでは結束の輪は強まらない。温暖化対策自体が正念場を向かえそうだ。

https://unfccc.int/