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COP24、パリ協定の運用指針を採択。先進国と途上国で差をつけず。協定の骨格は維持。米国離脱による先進国の資金拠出合意先送り。日本政府、存在感なく(各紙)

2018-12-16 09:41:39

COP24キャプチャ

 

 各紙の報道によると、ポーランドで開かれた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)は15日、地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定を運用する実施指針を採択した。指針では、先進国と途上国の間で大きな差は設けず、すべての国が対策に取り組むというパリ協定の骨格を維持、2020年からの適用が決まった。

 

 COP24は会期を1日延長して15日まで協議を続けた。資金調達では、協定から離脱する米国の負担分を先進国がどう負担するか焦点となった。協定維持を重視する欧州のフランスやドイツなどの先進国が途上国向けの基金を一定額増やすと表明した。ただ、米国の離脱分を完全に穴埋めできるかは不明。また先進国が2年ごとに将来の支援額を新たに示すとした。日本は積極的な支援増は示さなかった。

 

 合意された実施指針では、削減目標などの検証について、先進国と途上国で差をつけず共通のルールとすることで合意した。これを踏まえ、途上国も先進国と同じ削減についての情報公開が求められる。20年の運用開始以降に削減目標を確認する期間を5年間にするか10年間にするかの結論は次回のCOP25以降に持ち越された。

 

議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣
議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣

 

 一方で、各国が現行の削減目標に上積みを検討することでは一致した。パリ協定の目標は産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑え、1.5℃を努力目標としているが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月に、2℃未満に抑えても海面上昇による国土の消失や洪水リスクが高まるとし、1.5℃への抑制を示唆する報告書を公表している。こうした報告を受け、先進国や島嶼国を中心に目標の上積みが議論されていた。

 

 この結果、参加国は20年までに削減目標を現行より増やせるかどうかを検証し、再提出する。日本は2030年度に13年度比で26%削減の目標を公表しているが、今回のCOPでも石炭火力発電を内外で推進していることに環境NGOから強い批判が出た。米国を除く他の先進国が上積み目標を採択する場合、「日本はどうするのか」という判断を新たに迫られることになりそうだ。

グテレス国連事務総長
グテレス国連事務総長

 今回、先進国と途上国での共通ルール化は維持された背景では、米国などが「公平性を重視する」(ガーバー国務次官補代行)との主張を繰り返したことが大きかったという。途上国はその「代償」として、先進国からの資金・技術援助を引き続き確約を求めた。先進国がその「義務」を果たさないと、実施指針は機能しなくなるリスクを抱えている。

 

 日本から出席した原田義昭環境相は「来年の20カ国・地域(G20)議長国として『環境と成長の好循環』を実現する世界のモデルとなるべく取り組みを進める」と演説したという。COP24で日本の存在感が薄かったのは、G20に「『妙案』は取っておく」判断だったのかもしれない。だが、今できなくで、来年できる「妙案」はあるのだろうか。

 

 ブラジルが返上した来年のCOP25の開催地は、同じ南米のチリで開かれることになった。今回、実施指針は一応合意したものの、実施の中身では不一致の案件は山積している。

 

 効果的な温暖化対策のルールづくりの合意だけでこれだけ揉め、率先・共同行動の足並みの統一をいつまでも先送りし続けている間に、温暖化の加速による気候変動の激化は高まっている。自然の変動は待ってくれない。COPは、そろそろ『COPの中での争い』から脱却して、『コップの外』の変動に正面から備える行動をとるべきだが、間に合うか。

http://www.climatechangenews.com/2018/12/14/live-final-scramble-deal-climate-talks-poland/