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EU、乗用車のCO2排出規制、2030年までに「37.5%削減(2021年比)」で合意。中間目標として25年に15%削減(RIEF)

2018-12-18 12:20:01

EU1キャプチャ

 

  欧州連合(EU)は17日、域内で販売する乗用車のCO2排出量を2030年までに37.5%削減(対21年目標)することで合意した。バン(小型商用車)は31%削減とする。また中間目標として25年までに15%削減とする。当初の欧州委員会案よりも厳しい規制となることで、域内の自動車業界等では不満が高まっているが、EUはグローバルな温暖化対策を欧州がリードすることを優先した形だ。

 

 EUの現行の自動車CO2排出規制は、2015年時点で1km走行当たりCO2排出量が130g、2021年には27%削減の95gと設定している。パリ協定に沿って、2030年の排出規制をどうするかをめぐっては、欧州委員会が30%削減を提唱する一方で、各国で構成する閣僚理事会は35%削減、欧州議会は40%削減をそれぞれ提案、内部での調整が続いていた。結果的に、最も厳しい規制内容の欧州議会案に近い形で決着したことになる。

 

 今後、閣僚理事会と欧州議会が来年6月までに、新規制案をそれぞれ正式に採択したうえで成立させることになる。

 

勢ぞろいするEV車
勢ぞろいするEV車

 

 EU域内市場では、年間1500万台の新車が販売されている。これらの自動車からのCO2排出量はEU全体の排出量の10分の1以上を占めており、温暖化対策の推進にとって重要な課題となっている。主要国はガソリン車やディーゼル車から電気自動車(EV)への切り替えを打ち出しているが、現在、EVの割合はEU全体で1.5%に過ぎない。今回の排出規制の強化で、EV等のゼロエミッションカーへの切り替えを促す狙いだ。

 

 今回の合意に対して、これまで「20%削減」を主張していた自動車業界は強く反発している。ドイツ自動車工業会(VDA)のベルンハルト・マテス(Bernhard Mattes)会長は「過剰な規制だ。現時点では、これだけ厳しい規制を実際に達成できるかは誰もわからない。CO2削減規制が高すぎる一方で、EVに転換させるためのインセンティブ策はほとんど示されていない」と批判。自動車産業に打撃を与え、雇用にも影響すると警告している。

 欧州自動車産業のロビーグループの「ACEA」も「政治合意はもっともらしいように見えるが、現実を考えると全く非現実的な目標と言わざるを得ない」と反発している。

 一方で、グリーングループも不満を漏らしている。「規制が十分でない」との批判だ。ブラッセルに拠点を置く「Transport & Environment」は「欧州はゼロエミッションカー(ZEV)の開発競争に向けて、もっとギアアップすべきだ。今回の合意案では、2030年までに新車に占めるEVや燃料電池車の割合は、3分の1にとどまる。それはそれで前進だが、われわれがパリ協定で目指す目標にはとても足りない」と指摘している。

 合意を仕切った現EU議長国オーストリアの環境相Elisabeth Koestinger 氏は「今回の合意は気候変動とのわれわれの闘いにおいて重要なシグナルを示すものだ。タフで集中した交渉を展開した結果だ」と強調している。EUが自動車CO2規制で厳しい方針を打ち出したことは、日本を含め、他の国の自動車規制にも影響を及ぼしそうだ。