HOME |人間活動由来の地球温暖化による熱量増大の約90%は、海洋が吸収。広島級原爆の1.5個分。近年は同3~6個分に増大。海面上昇の加速、台風等の激化の要因に。英研究チームが解明(RIEF) |

人間活動由来の地球温暖化による熱量増大の約90%は、海洋が吸収。広島級原爆の1.5個分。近年は同3~6個分に増大。海面上昇の加速、台風等の激化の要因に。英研究チームが解明(RIEF)

2019-01-08 16:03:06

seaheating1キャプチャ

 

  人間活動による地球温暖化がもたらす熱量増大の90%以上が海洋に吸収されており、その熱量は過去150年間で毎秒、広島級の原爆1.5個分と同量との推計がまとまった。英ガーディアン紙が専門家と調査した。温暖化の進展は海洋の熱吸収量を増加させ、現状は原爆3~6個分に増大しているという。海洋による膨大な熱量吸収の結果が海面上昇や台風等の巨大化につながっているとみられる。

 

 (写真は、海洋の温度調査をする調査チーム)

 

 調査はガーディアン紙と英オックスフォード大のLaure Zanna教授らの研究チームが実施した。研究論文は、科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載された。

 

 それによると、海洋の熱量吸収力はこれまで考えられていたよりも大幅に大きいことがわかった。大気中や土壌、氷山等の吸収はそれぞれ数%にとどまる。これまでの研究では海洋の熱量吸収データは1950年以降のものしかなかったが、研究チームは1871年以降の海洋循環のデータを分析した。過去の海洋熱量の変化は今後の気候変動の予測に重要な要素となるためだ。

 

 調査結果では、過去150年間を通じた海洋の熱量吸収力は1秒当たり、広島級原爆1.5個が発した熱量と同量と推計された。これは150年間の平均で、近年は、温暖化の加速で吸収量は急増し、原爆3~6個分に増大しているとみられる。

 

  Zanna教授は「海洋の熱量吸収に比べると、人類が経済・社会活動で使うエネルギー使用の熱量は大したことはない」と指摘している。研究チームの推計では、海洋の熱量吸収量は世界人口すべてが年間使用するエネルギー量の約1000倍も大きいとみられる。このことは、人類のエネルギー利用が随分と非効率的であるともいえる。

 

 海面上昇は、気候変動のもっとも危険な長期的影響として知られる。世界中の多くの人々が居住する沿岸部地域を浸水や暴風雨増大の危険に晒す。将来の海面上昇度の予測は温暖化対策の適応(Adaptation)策のカギを握る。海面上昇の要因の一つは、グリーンランド等の氷河の融解として知られているが、海洋自身の熱量増大による物理的膨張の影響はさらに大きな要因であることがわかった。

 

 ただ、海洋の温暖化は海流の循環によって均一的に起きるわけではない。 例えば今回の研究では、大西洋の低中緯度地域での1971年以来の海温度の上昇は、150年平均の半分程度だったとしている。これらの変動は海流の影響とみられる。適応対策の立案には、こうした海温の変動を踏まえて策定する必要がある。

https://www.theguardian.com/environment/2019/jan/07/global-warming-of-oceans-equivalent-to-an-atomic-bomb-per-second