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温暖化によるグリーンランドの氷溶融、従来の想定より4倍のペースで進行。年間3mmの海面上昇の要因に。「もはや傾向は止められない」。米オハイオ大学研究チームが分析・警告(RIEF)

2019-01-22 18:57:39

Greenlandキャプチャ

 

  温暖化の影響による海面上昇要因とされるグリーンランドの氷河等の溶解が、従来考えられていたよりも加速しているとの研究論文が公表された。衛星からの観測データを解析したもので、2003年から2013年半ばまでの間に、溶融のペースは約4倍に増加しているという。これまで同地での氷河溶融は年間280Gtのペースで、海面上昇への影響は0.03インチ(0.76mm)とされていた。それが年間3mmの上昇に加速していることになる。研究者らは「この傾向を止めることはもはやできない」と警告している。

 

 研究成果をまとめたのは、米オハイオ大学のマイケル・ベビス(Michael Bevis)教授らのグループ。21日発行の米学術誌、米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。

 

 これまでグリーンランドの氷河の動向は、氷河の多い南東部や北西部での溶融の状況が中心的に調べられてきた。オハイオ大学のチームは、そうではなく南西部地域を中心に、全地球測位システム(GPS)によって沿岸部の変化を詳しく分析した。

 

Michael Bevis教授
Michael Bevis教授

 

 調査によると、同地域には大きな氷河はそれほどないが、周辺の氷の溶融は急速に進んでいることがわかった。その要因は、氷の解けた水が大量に海へ流れ込んでおり、しかもその流入量が観察期間中に増大しているためという。ベビス教授は「氷河の溶融は知られてきたが、第二の問題として、従来は深刻な問題とは考えられなかった溶けた水の海洋流出の増大が加速する、という問題が顕在化している」と指摘する。

 

 ベビス教授によれば、これらの影響で、米国の沿岸部の都市、たとえばニューヨークやマイアミなどのほか、島嶼部諸国は、海面上昇の影響を従来よりも深刻に受け止めざるを得ない、という。さらに、海洋に流入する水量増加のペースはもはや食い止められず、「我々にできるのは温暖化のペースに順応することと、この先の温暖化を和らげることしかない。影響をゼロにしたくても手遅れだ」と述べている。

 

 グリーンランドの氷河の溶融状況は、NASA(北米宇宙局)とドイツの衛星共同観測システムである「GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)」によって常時観測されている。2002年から2016年までの観測データによると、氷河の溶融状態は、年間280Gtで、海面上昇への影響度は年間平均0.03インチとされてきた。しかし、今回の研究で同地南西部では、その約4倍の勢いで氷の溶融が進み、海面上昇が進行しているデータが観測された。

 

 研究では、こうしたグリーンランド南西部での温暖化の加速は、人類の影響による温暖化現象の加速に加えて、北大西洋振動(North Atlantic Oscillation)として知られる気象現象によって、暖かい空気がグリーンランド西部や南西部に流れ込んでいること、さらに太陽光の放射の影響などが重なって起きていると推計している。ベビス教授は「海面はさらに上昇するだろう。氷床はすでに暴走が始まる臨界点に達している」と警告している。

https://news.osu.edu/greenland-ice-melting-rapidly-study-finds/

https://www.sciencedaily.com/releases/2019/01/190121153636.htm