HOME8.温暖化・気候変動 |ドイツ政府委員会が、石炭火力発電を段階的に閉鎖し、2038年までに全廃する「脱石炭」報告書で合意。エネルギーの35%を占める石炭をゼロに。政府も受け入れの方向(RIEF) |

ドイツ政府委員会が、石炭火力発電を段階的に閉鎖し、2038年までに全廃する「脱石炭」報告書で合意。エネルギーの35%を占める石炭をゼロに。政府も受け入れの方向(RIEF)

2019-01-27 14:58:56

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  ドイツが、国内の石炭火力発電を段階的に全廃する方向が明確になった。産業界、環境団体、学識者などで構成する政府委員会が26日、2038年の全廃を目標とする「脱石炭」の報告をまとめた。現在、石炭は同国のエネルギー構成の35%を占めるが、CO2削減を最優先した。ドイツはすでに原発の2022年までの全廃を決めており、今回の石炭火力の全廃方針で、エネルギー政策では環境と安全性を最優先する路線をとることになる。

 

 28人で構成する政府委員会「Commission on Growth, Structural Change and Employment」は昨年6月に設立、以来、6カ月以上の協議を重ねてきた。25日から最終協議を続け、21時間のマラソン議論の結果、翌日の26日朝に決着した。28人中27人が最終報告に合意したという。

 

 委員会報告に基づき、エネルギー政策を変更するかどうかは政府の判断だが、政府は委員会報告を原則的に尊重する姿勢を示している。また報告は「委員会は広範囲な社会各層の意見をまとめたもので、将来に向けた堅固な社会的コンセンサスに基づく」と、政府に要請している。

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 合意内容は、石炭火力発電所を「段階的にフェーズアウトするロードマップを示している。まず、2022年までに12.5GW分の発電所を閉鎖。続いて2030年までに追加で25.6GW分を閉鎖する。 これ等の閉鎖に伴い雇用等に影響の出る地域には、20年間で400億ユーロ(約5兆2000億円)強の政府支援を行う。新規石炭火力の建設は認めない。

 

 最終報告書は、気候変動を抑制するには、グローバルに石炭火力を終了させることが不可欠、と指摘した。同時に、ドイツのような高度な産業構造で、相対的に石炭依存度の高い輸出主導国にとって、石炭火力の廃止は特に挑戦な課題である、と決断の重要性を強調している。

 

 石炭火力全廃の目標に向けたロードマップの前段として、現状の政策の下でも、ドイツのエネルギー部門のCO2排出量を現状の年間3億1300万㌧から、2020年までにほぼ2億8000万㌧に約1割削減できるとしている。ただこれだけでは2030年に同セクターの排出量を1億7500万~1億8300万㌧に引き下げる国家目標の達成はできないと指摘。

 

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 このため「脱炭素』のロードマップでは、2020年までに褐炭燃料の石炭火力を2017年から5GW、無煙炭燃料の石炭火力を同7.7GWそれぞれ削減し、両石炭火力の発電量を各15GWにまで引き下げる。さらに、電力網の「グリッド・リザーブ」として保有する電力(2.3GW)を現状の石炭から天然ガスに切り替えることも求めている。

 

 次のステップとして、2023~2030年の間に、追加で褐炭火力を10.9GW、無煙炭火力を14.7GWそれぞれ閉鎖する。この結果、褐炭火力の発電量は9GW、無煙炭火力は8GW、合計17GWにまで下がる(現状42.5GW)。その後、2032年までに、残りの石炭火力の廃止をオプションとして決定するとしている。合意した場合、2038年までに全廃する。

 

  こうした段階的削減で、2020年までにCO2排出量を40%削減(1990年比)するという匡の目標と、エネルギー部門の2030年目標達成が確実になるとしている。委員会は、石炭火力削減のロードマップの進捗状況を確認するため、独立した専門家による、中間レビューを、2023年、 2026年、 2029年にすることも求めている。

 

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 委員会は「こうしたレビューは、2022年の原発全廃のシナリオとの整合性をとるためにも必要」と指摘、原発全廃と石炭火力全廃を同時に睨んだエネルギー政策の展開を求めている。

 

   委員会は、石炭電力業者への補償や石炭関連労働者の雇用問題については、政府と同業界との「相互協定」の締結を提案している。現在、ドイツの石炭産業は関連業界も含めて約6万人の雇用を抱えている。同業界との間での相互合意が、困難な場合は、電力の安定供給を確保したうえで、2020年6月末以降に、法的措置を講じて補償対応を決める、と提言している。

 

 約400億ユーロに上るエネルギー転換に伴う該当産業、地域等への政府支援策は、地方政府殻の拠出という形とし、電力料金への上乗せ策にはしないよう求めている。

 

 今回のドイツの政府委員会の最終報告は、経済構造と石炭火力依存度の高いに日本にとっても、参考に値する内容といえる。

 

https://www.cleanenergywire.org/factsheets/german-commission-proposes-coal-exit-2038

https://www.climatechangenews.com/2019/01/26/german-quit-coal-2038-commission-proposal/