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前国連気候変動枠組条約事務局長のフィゲレス氏、内外での日本の石炭火力事業を批判。「世界には、石炭火力を受け入れる余地ない」。超々臨界圧方式を含め「ノーモア・ニュー・コール」と主張(RIEF)

2019-02-13 15:51:04

 

 来日中の前国連気候変動枠組条約事務局長(UNFCCC)のクリスティアナ・フィゲレス氏は13日、記者会見で、石炭火力発電所建設について「新規の石炭火力建設はパリ協定の『1.5°目標』に合致しない」と指摘。日本が官民連携でアジアなどに超々臨界圧石炭火力発電事業(USC)等の輸出に力を入れていることについて「世界にはもはや石炭火力発電を受け入れる余地はない」と明言した。

 

 フィゲレス氏は、2010年から16年にかけてUFCCC事務局長として、パリ協定に至る各国間の交渉の取りまとめに尽力したことで知られる。退任後、温室効果ガス排出削減と各国の安定と繁栄の時代構築を掲げる「ミッション2020」議長を務めるなど、引き続き、グローバルな活動を展開している。

 

 フィゲレス氏は、安部首相が1月の世界経済フォーラム(WEF)で、1.5°目標達成の重要性に触れる演説をしたことを評価。「日本が目標達成するには、エネルギー転換が必要」と述べた。日本のエネルギー戦略が原発再稼動と石炭火力の継続を掲げている点について「原発問題は日本が決めることなので、ノーコメントだが、石炭火力はもはや世界のどこにも新規を建設する余地はない」と断言した。

 

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 同氏は「日本が、石炭火力しかエネルギーのオプションがない場合は仕方がない。だが(日本は)そうではない」と述べた。国内で新規の石炭火力建設計画が30件以上進んでいることを踏まえ、「日本の行動は世界から見ると、容認不可と言わざるを得ない。日本は気候変動の影響で今後、ますます災害に対して脆弱な国になっていく。日本がこれからも石炭火力を推進したり、海外にも輸出したりし続けることは、日本の評判が国際的に傷つき、金融的にもリスクとなる」と警告した。

 

 同氏はアジア市場全体で、石炭火力事業への投融資を制限する動きが出ていることにも触れ、「アジア開発銀行などはすでに石炭火力向け融資を供給しないことを決めている。日本の金融機関でも、日本生命や第一生命、三井住友信託銀行などが石炭火力事業向け投融資の中止を宣言している。石炭の金融リスクへの対応だ」と、先行する金融機関等の動きを評価した。

 

 安倍政権が官民連携の事例として推進するアジア等への石炭火力輸出事業についても、「1.5°目標の達成を目指すならば、超臨界圧石炭火力発電(SC)も、超々臨界圧石炭火力(USC)も、受け入れる余地は残っていない」と明言。カーボン回収・貯留(CCS)技術の採用についても「技術の中身にかかわらず、石炭はもはや受け入れられない。石炭の時代はもはや終わった。あいまい性はゼロにしなければならない」と述べた。既存の石炭火力は別として、新規石炭火力建設について「ノー・モア・ニュー・コール」を繰り返した。

 

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 既存の石炭火力についても、「すべての稼働中の石炭火力発電まで『すぐに止めろ』と言っているのではない。既存の火力については、常識的な移行期間を設けて、再生可能エネルギー発電に移行していくべきだ。その移行も迅速にしてもらいたい」と強調した。

 

 温暖化問題に対する日本の「責任」については、「日本のように高齢化が著しい国は、二重の責任を負っている。一つは温暖化の影響を最も受け易い高齢者、弱者への責任。二つ目は未来の世代に対して責任を負っている」と、長期的な視野に立った政策の立案を求めた。