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国連「児童の権利委員会」、未来を担う子どもを守るため、日本政府に対し、気候変動対策強化と石炭火力輸出促進への公的金融活用見直しを求める初の勧告(RIEF)

2019-02-18 09:00:51

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 国連の「児童の権利委員会」は、日本政府に対し、子どもの権利保護の観点から気候政策と石炭火力政策の見直しを勧告した。その中で、政府が国際協力銀行(JBIC)等を通じて海外の石炭火力発電事業への公的融資を展開していることを見直し、持続可能なエネルギーへ転換するよう要請した。

 

 (写真は、温暖化対策を求めて登校拒否の抗議行動をするドイツ・ベルリンの中高校生たち)

 

 同委員会は、国連「児童の権利に関する条約」に基づいて設置されている。定期的に各国が条約の義務履行状況を審査している。今回は、日本政府が提出した「第4・5回日本政府報告」に対する勧告を報告書(Considering Observations)として公表した。

 

 同委員会が、日本政府に対して、子どもの権利保護の観点から気候政策と石炭火力政策の実質的な見直しを勧告したのは初めて。気候変動対策を怠ることは、未来を担う子どもの権利を侵害するものであることを、強調している。

 

 同委員会の日本政府への勧告は、日本の温暖化対策が①国際協定と整合するものであることを確保すること②政府による、他国の石炭火力への公的融資を見直し、持続可能なエネルギーへ転換することを確保すること、の2点を強く求めている。

 

 パリ協定で日本政府が公約した温暖化対策は、2030年のGHG排出量を2013年比26%削減とするものだが、委員会の勧告が「国際協定と整合するよう」求めたのは、日本の削減案は、パリ協定が目標とする「1.5℃~2℃目標」の達成には不十分であることを示した形だ。

 

 また、インドネシアやベトナムなどで日本の商社が主導する石炭火力事業に対して、JBICや日本貿易保険(NEXI)が公的融資を提供することの見直しを求めた点は、政府主導の公的金融支援が、日本の3メガバンク等による融資リスクを軽減させる役割を担い、日本の金融は官民連携で「未来の子ども」に負荷をかけていると指摘した形だ。http://rief-jp.org/ct5/86994

 

 環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は、オランダで気候訴訟を行っている「ウルゲンダ財団」法律顧問のデニス・ヴァン・ベルケル氏の 「委員会報告書は、日本の気候変動及び石炭火力発電所の政策は、人権に甚大 な影響を及ぼすものだと明白に指摘している。今回の報告書は、同委員会がこれまで出したどの勧告よりも、気候変動 や石炭火力政策が子どもの人権保護の義務と一致させる必要性に具体的に踏み込んでいる」との発言を紹介している。

 

 気候変動対策が、子どもの権利保護につながる点は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標13で気候変動対策が取り上げられているほか、この目標達成のゴールの一つとして、途上国や島嶼部の青年、女性、コミュニティ等への対応を求めていることで明らかだ。

 

 日本政府はSDGs推進を掲げているが、17の目標、169のゴールについて、都合のいい部分だけをつまみ食いし、他国への影響や、将来世代への負荷等の軽減等こそが本来の目標であることを無視している、と批判された形だ。

 

 現在、欧米では、スウェーデンの16歳の少女が気候変動対策を求めて一人で始めたストライキが、スイス、ベルギー、オランダ、英国などで、数千・数万の中高生の行動として広がっている。子ども自身が「権利」を主張し始めているのだ。

 

 委員会の勧告の気候変動に関連する点は以下の通り(KIKOのサイトより)。

 

 (a) 気候変動や災害リスクマネジメントに関する政策やプログラムを開発する際には、子どもの特別な脆弱性・ ニーズ、視点を確保すること。

 

 (b) 学校のカリキュラムや教員のトレーニングプログラムに組み込むことを通じて、気候変動や自然災害への子 どもの意識と準備を向上させること。

 

 (c) 国際・地域・国の政策や枠組、合意を形成するために、子どもが直面する様々な災害のリスクのタイプを特 定するデータを収集すること。

 

 (d) 気候を緩和する政策が、条約と整合的であることを確保すること。中でも、温室効果ガス排出削減は、国際 協定と一貫性を持ち、子どもの行使、特に健康・食料・良好な生活水準の確保の権利を脅かすような水準を回 避するものであること。

 

 (e) 他国における石炭火力発電所への政府の公的融資を再検討し、それらが徐々に持続可能なエネルギー を利用した発電所へと更新されることを確保すること。

 

 (f) これらの勧告を実施する上で、二国間・多国間・地域・国際間の協力を模索すること。

 

 同委員会は、対日審査のプロセスで、日本政府に対する質問の一つに、現在の気候政策と国内外の子どもの健康・食料・良好な生活水準などにおける権利保護との整合性を説明するよう求めていた(質問8)。これに対し政府は、2030年26%目標への取り組みや、途上国との2国間クレジット制度の利用などを日本の対策として回答していた。

 

  KIKOは「今回の勧告によって、日本政府が、子どもの権利という観点から気候変動への対応の必要性を十分に認識しておらず、そのことが現行の気候政策を不十分な水準に止め、石炭火力推進を野放しにしている現実が浮き彫りになった。勧告を受け、政府は気候政策及び石炭推進政策を、子どもの権利の保護の観点から、速やかに見直すべきだ」と指摘している。

 

 国連の「児童の権利委員会」は、児童の権利条約に基づいて設置された委員会で、18人の独立した専門家で構成。委員会は定期的に開催され、条約による義務について締約国の進捗状況を審査し、義務の履行を政府に勧告する等の活動をしている。

 

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2019/02/Press-release_CRC_Feb2018_jp.pdf

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/index.html