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「気候変動阻止の登校拒否」を世界に広げるスウェーデンのグレタは16歳。「温暖化の事実に、政治家が何もしないのに、学校に行って何を学べるというの?」(RIEF)

2019-02-20 01:04:20

 

 地球温暖化対策を促す力として、今、世界で最も影響力があるとされるのが、スウェーデンの16歳の女の子だ。グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さん。昨年夏にスウェーデンでたった一人で議会前に座り込み、効果的な温暖化対策をとらない大人たちに抗議する「登校拒否」を続けた。「グレタの怒り」は今、世界の子どもたちに確実に広がり続けている。

 

 (写真は、スウェーデン議会前で一人で座り込むグレタ・トゥーンベリさん)

 

 昨年8月、「座り込み」と「登校拒否」という直接行動を実践した時、グレタは15歳だった。一か月後の9月に予定されていたスウェーデンの総選挙に向けて、気候危機を訴えるのが目的だった。

 

「温暖化の事実に、政治家が十分な注意を払わないのに、学校で何を学べるというの?」というのが彼女の疑問だった。昨年のスウェーデンの夏は統計がとられてから262年間でもっとも暑い夏となり、山火事や熱波で多くの犠牲者が出た。

 

スウェーデン議会前で一人で座り込むグレタさん
スウェーデン議会前で一人で座り込むグレタさん

 

 グレタは首都ストックホルムのスウェーデン議会の前で3週間の座り込みを敢行した。選挙後は毎週金曜日にストライキを実施し続けている。たった一人の「グレタの抗議」に対して、徐々に賛同者が現れ、座り込みは数百人規模に膨れ上がった。

 

 心配した大人が声をかける。「気持ちはわかるけど、学校には行ったほうがいいよ」。すると、彼女は鞄から教科書を取り出して見せる。「教科書は持っている。でも、私が失いつつあるものは何かを考えているの。温暖化の事実はすでに明らかなのに、政治家は科学者の言うことに耳を傾けない。そんな学校で何を学べるの?」

 

 最初の3週間の座り込みの間、彼女は宿題をすべて仕上げ、温暖化関連の本を3冊、読んだという。「教室はここよ」。

 

「誰かが行動しなければ、何も始まらない」と訴える
「誰かが行動しなければ、何も始まらない」と訴える

 

 スウェーデンはこれまでも環境配慮、温暖化対応を他の先進国より率先して実施してきた。昨年は、2045年までに国全体でカーボンニュートラル(排出量ネットゼロ)を実現する目標を立て、法律も制定している。

 

 しかしグレタは、「(国のやっていることは)ほんのわずかの行動で、しかも対応が遅すぎる(too little too late)。本当は、もっと迅速に対応すべき。スウェーデンは決してグリーンの楽園ではない。大きなカーボンフットプリントを引き続き持っている」と冷静に分析する。

 

 両親はどう考えているのか。グレタの母親は同国で有名なオペラ歌手。母親も数年前に飛行機の排ガスで温暖化を加速することを拒否し、国際的な活動を停止したという。ただ、両親ともグレタには学校に行ってほしいと考えている。

 

 父親は、彼女が温暖化阻止のために、家族の生活パターンを変えるよう求めてきたことを明かしている。家族で温暖化問題に関するあらゆる書物を読み、対応策等を家族で一緒に考えてきたという。だが、「われわれは解決の手がかりをつかめていない」と苦悩を明かす。

 

大人たちに語りかける
大人たちに語りかける

 

 学校当局も意見が分かれている。グレタによると、「私に賛同してくれる先生と、反対する先生とがいる」。中には休職して、グレタと一緒に座り込んだ先生もいる。親も先生も、温暖化の問題を知りながら、グレタのように、明確に阻止する行動に出るべきかどうか、戸惑っているようだ。

 

 グレタはその後、12月にポーランドで開いた国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)や、今年1月のスイス・ダボスでの世界経済フォーラム(WEF)等にも招待された。彼女は温暖化への加担を最小化するため、スウェーデンから列車でそれぞれの街に向かった。そして、いずれの場でも正面から「大人たちの不作為」を指摘し、会議に踊る人々に冷徹な一瞥を向けた。

 

 「グレタの抗議」に明確に反応し、抗議の「登校拒否」の宣言を表明したのが、世界中の子どもたちだ。11月には、オーストラリアの中高生たちが数千人単位で登校拒否を宣言した。ドイツ、ベルギー、スイスなどは2万人以上が学校に行かずに、抗議行動で街に出た。

 

「子どもたちの連帯」は広がる。(英国の13歳の少女)
「子どもたちの連帯」は広がる。(英国の13歳の少女)

 

 先週末には、ブレグジットで大人たちが混迷する中で、英国各地で子供たちが、気候変動対策の強化を求めて抗議行動を展開した。英議会前でも、「ブレグジットより気候変動対策を」と声を上げた。ドイツでは3万人の中高生が、ベルギーでは1万2500人が、スイスでは15の都市や町の学校で登校拒否が起きた。「未来の無い学校に行って何を学べるのか」と。

 

 16歳になったグレタは、「次の広がり」を見据えている。「子どもの声を聞いて、今後は親に支援の輪が広がっていくだろう。大人たちは、だれもが、『若者は怠けていずに、もっと行動的になれ』という。ところが若者が行動し出すと、今度は批判する」。

 

 「古い世代は自分たちが環境を守ることに失敗したことに気付かねばならない。彼らに、この問題を作り出したことの説明責任を果たしてもらわねばならない。彼らが作り出したことに、われわれ子どもや若者が、責任を負うのは公平ではない」

 

取材にも堂々と対応するグレタさん
取材にも堂々と対応するグレタさん

 

 ダボスでの会議でも、彼女は世界から集まったビジネスリーダーたちに直言した。「あなた方に問う。歴史の正しい側につくことを。あなた方のすべてのパワーで、『1.5℃目標』に沿ったビジネスの展開と政府への働き掛けをすると約束することを」

                                                                      (藤井良広)

https://www.theguardian.com/science/2018/sep/01/swedish-15-year-old-cutting-class-to-fight-the-climate-crisis

https://medium.com/@wedonthavetime/greta-thunberg-sweden-is-not-a-role-model-6ce96d6b5f8b

https://medium.com/@wedonthavetime/greta-thunberg-sweden-is-not-a-role-model-6ce96d6b5f8b

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