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小規模石炭火力発電計画、19基のうち10基がすでに稼動。条例アセスメントの不在が稼動を促進。環境NGOのKIKOが調査で指摘(RIEF)

2019-02-23 09:17:58

sendai1キャプチャ

 

   2012年以降に計画された小規模石炭火力発電所(発電量11.25万kW以下)の建設計画19基のうち、10基がすでに運転を開始していることがわかった。環境NGOの気候ネットワークは調べたもので、小規模石炭火力は国の環境影響評価法(アセスメント)の対象外だが、稼動した10基はすべて自治体の条例によるアセスもない地域で、条例アセスがある地域では、2基が停止、4基が燃料転換を選択していた。KIKOは条例アセスが一定の歯止めになっていると指摘している。

 

 (写真は2017年10月に稼動した仙台パワーステーション)

 

 調査はKIKOがまとめた「小規模石炭火力計画に関するレポート」と題する報告書。それによると、このほか3基が建設中になっている。この結果、2012年以降に把握された日本国内の大規模石炭火力を含む発電所建設計画50基のうち、12基(691.8万kW)が中止・燃料変更ととなり、12基(130万kW)が稼動したことになる。

 

 小規模石炭火力計画19基のうち、17基は発電量が11~11.2万kWと国のアセス義務化基準をわずかに下回る容量。KIKOは「効率が悪いことをわかっていながら、あえて環境アセスを回避する設備」とし、事業者の企業倫理が問われる、と指摘している。

 

2016年9月稼動の日本製紙の鈴川エネルギーセンター(静岡)
2016年9月稼動の日本製紙の鈴川エネルギーセンター(静岡)

 

 この間に稼動した小規模石炭火力は、日本製紙系の鈴川エネルギーセンター(静岡)、大阪ガスの中山名古屋第2発電所(愛知)、名港海運・西華産業の名南共同エネルギー(愛知)、関西電力・伊藤忠商事の仙台パワーステーション(宮城)、関西電力・三菱法事・三菱化学の水島MZ発電所(岡山)など。

 

 いずれも条例で火力発電設備をアセスメントの対象としていない自治体に集中している。また環境省は自治体条例のない地域での建設には、事業者自身による「自主アセス」の実施を推奨しているが、これらが適用された形跡はないという。KIKOは条例アセスがない地域ではすべて稼動していることを問題視している。

 

 KIKO1キャプチャ

 

 条例アセスの効果については、仙台市での事例でも示されている。同市では、2017年10月に関電・伊藤忠による仙台パワーステーションが住民の反対にもかかわらず稼動した。その後、仙台市が条例の対象に火力発電を含めたことで、別途、四国電力と住友商事が進めていた建設計画は、四国電力が計画から撤退、住商も石炭からバイオマス100%に転換する見直しをするなどの効果をあげている。

 

 ただKIKOは、条例アセスは、石炭火力発電所の新規計画の実施に一定の歯止めにはなっていると評価する一方で、木質バイオマス化を促すことになっていることに警戒を示している。木質バイオマス火力は、燃料を東南アジア等から輸入するケースが多く、輸送中にかかるエネルギーの問題、現地での森林伐採拡大による持続可能性への懸念、燃焼時に排出されるNOxやPM2.5などによる大気汚染問題などがあるためだ。

 

 なお、レポートでは、秋田県で日本製紙が計画する秋田バイオマス混焼発電事業と、三重県で三菱商事が手掛けるMC川尻エネルギーサービスの2件の計画停止案件について、いずれも条例アセスの途中段階で停止していることを踏まえて、パリ協定に基づき、速やかに計画を中止する英断を求める、としている。

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2019/02/5423d102a8d97af274707fa8c64ee378.pdf