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太陽光発電への投資を刺激する日本の新しいクリーンエネルギー政策(Bloomberg)

2012-03-27 14:53:13

2012326日、東京、ロンドン、ニューヨーク – 新エネルギー市場の民間調査会社であるブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスが行った調査によると、再生可能エネルギーの固定価格買取制度について政府が当初提案していた価格が成立すれば、日本における風力発電および太陽光発電のプロジェクト開発は収益性の高い非常に魅力的な分野になる可能性がある。日本は世界で最も設備コストの高い国だが、買取価格によっては市場の急成長が期待される。

 

1年前の福島原発事故以来、日本は原子力への依存度を低減させるクリーンエネルギー政策に取り組んできている。その取り組みの1つが2012年7月に施行される固定価格買取制度(FiT)であり、これによって再生可能な電力供給への投資の加速が期待されている。政府が制度検討過程で提案していた買取価格が適用されれば、その買取価格は世界で最も高い水準となり、再生可能エネルギーの開発事業者には魅力的な市場となる。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス・日本オフィスのマネージャーである中村有吾は次のように語る。「日本政府は、再生可能エネルギーへの投資を刺激しながらも、クリーンエネルギーによって過度なコスト負担が発生しないような最適価格を模索している。買取価格が高すぎれば、日本は今後も設備コストが世界一高い国になるというリスクを負うことになり、他の国で発生したブーム・バスト・サイクル(好不況のサイクル)の状況に陥る危険性がある。逆に買取価格が低すぎれば、再生可能エネルギーのマス・マーケットを実現することはできないだろう」。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは、提案されていた買取価格が成立した場合、コストが現在の水準であれば、太陽光発電プロジェクトの収益率は10%前後、風力発電は14%前後になると試算している。長期的にみれば、再生可能エネルギーの技術コストは低減を続けるだろう。そのため、買取価格が当初のレベルから大幅に下がったとしても、国内での再生可能エネルギーの導入は加速すると考えられる。さらに、国内の再生可能エネルギーの技術コストが国際的なレベルまで下がれば、太陽光発電で44%、風力発電で51%の収益率が期待できる。

 

買取価格が最終的にどのようなレベルに落ち着くか、また伝統的に保守的な政府によって再生可能エネルギープロジェクトがどのように推進されるかによるが、日本の風力および太陽光の累計発電量は2014年までに20GWに達すると考えられる。設備コストが現在の水準のままだとしたら、今後3年間に総額でおよそ375億ドルの投資が必要になる。

 

ここで注意すべきことは、7月から適用されるFiTの買取価格はまだ正式に発表されていないという点である。買取価格が提案レベルを大幅に下回れば、投資収益率は低下し、市場拡大の速度も緩やかになるであろう。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの東京チームは最新の調査レポートにて、ポスト福島のエネルギー政策に向けた分析として、日本におけるクリーンエネルギー技術を使った発電コストに関する調査を行い、再生可能エネルギーの実質的な発電コストを化石燃料の発電コストと比較した。調査の結果から、現在の日本のクリーンエネルギーコストは世界的にみて圧倒的に高いレベルにあることがわかる。その原因はサプライチェーン、特に設置部門が脆弱であることだが、市場競争が激しくなればコスト低減につながる可能性がある。

 

また、投資収益の試算では、今後20年の太陽光発電のFiTが32円/kWh(416ドル/MWh)だとすれば、非常に魅力的な投資リターンを得ることができる。現在のコストレベルでの収益率は10%程度だが、国内の太陽光発電市場が成熟し競争が本格化して価格が国際レベルまで下がれば、44%ほどに増加する可能性もある。もちろんFiTが高くなれば収益率はさらに高くなる。

 

風力発電については、今後16年間の買取価格が16円/kWh(208ドル/MWh)であれば、14%を超える収益率を達成できることになる。日本の設備コストは国際的な標準レベルを55%上回る状況だが、これが国際的なレベルまで低減し、風力発電所の設備利用率が30%を達成できれば、このレベルの買取価格で50%を超える収益率も達成可能である。ただし、日本のプロジェクトは規模が小さく、地形が複雑であることから、このように高い収益率を達成するのは非常に難しいであろう。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは、新しく実施されるFiTが魅力的な投資対象を生み出すことで、日本の再生可能エネルギー市場、特に太陽光発電市場は大きく拡大すると予測している。2014年までに、太陽光による発電能力は10GW、風力は0.7GWを超え、設備コストが現在の水準のままだとしたら今後3年間で年間125億ドルの投資が必要になる。太陽光発電の新規プロジェクトはすぐに開始される一方で、風力発電は開発準備に時間がかかるため2015年から増大すると考えられる。その結果、日本は2014年までに世界第3位の太陽光発電市場へと成長する可能性がある。

 

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスのアジアマネージャーのMilo Sjardinは次のように語る。「FiTは、日本のエネルギー市場に大きな変化をもたらす可能性がある。今後3年間で、3基の原子力発電所に相当する発電量を供給することが可能な分散型の太陽光発電所の建設が急ピッチで進むであろう。ただし、再生可能エネルギーをさらに推進するためには電力部門の自由化が不可欠であり、その行方は規制当局にかかっている」。

http://about.bloomberg.com/pdf/bnef_press_release_3_26_2012_jp.pdf